テーゲル空港に別れを告げに #Danke TXL

noteの方にも「テーゲル空港に降り立った日」というタイトルで日記のようなものを書いたが、ブログの方にも違う視点からテーゲル空港を訪れた日のことを書き記しておこうかと思う。

テーゲル空港はプライベートでは一時帰国の移動に、それ以外ではほぼ仕事の際に使う空港だった。

市内からタクシーで30分以内で到着できる空港というのはかなり魅力的なのだ。旧東ベルリンに位置するシューネフェルト空港はそういう意味では自分にとって東欧に行く際に仕方なく使う空港、というイメージがどうしても強い。

タクシーで行くことはほとんどなく、シューネフェルトはベルリンの公共交通網であるBVGやSバーンを使う必要があるが、ABエリアのチケットでは足りず、Cゾーンの追加料金を払う必要があり、遠くて面倒な空港でしかなかった。

2001年にモスクワから引き上げた際も到着したのはシューネフェルト空港だった。

それはそうと、テーゲル空港に久しぶりにタクシーを使わずに行こうとしてふと思ったのが「どうやって行けばいいんだっけ?」ということだった。もちろんGoogleマップで調べたのだが、ベストルートとして、いつも利用している沿線の降りたことのない駅から乗ったことのない路線のバスが出てきた。

なるほど、こういう行き方もあるのか。

いつものようにタクシーを使おうかとも思ったが、そこは敢えて違う行き方で行ってみようと思った。

地下鉄の出口を上がると目の前にバス停があった。しかし、テーゲル行きの番号が見当たらない。運行表を見ていると、その様子を見ていたどう見ても地元のおじさんが声をかけてきた。ノイズキャンセリングのヘッドフォンをしていたので気付かなかったのだが、何度もこちらを見ているのでヘッドフォンを外すと、

「エアポートに行きたいのか?それだったら広場を横切ったところにバス停があるよ。」

とずいぶん親切に教えてくれた。観光客だと思われたようだ。教えてもらったバス停に移動してバスを待っていると、これまた年配の男女とひとりの女性がバスを待っていた。何かのきっかけで話し始め、「あ、バスが来たわね。」とみんなでバスに乗ろうとしたらBetriebsfahrtの表示が。いわゆる「車庫行き」だったのでみんなで目で合図しながら苦笑。

なんなんだ、このエリア。昔のベルリンみたいな空気感だな。

そんな風に思った。今、住んでいるエリアは開発が進みすぎて住民も偏っているし、なんというかローカル感がとても希薄になっているからだ。

空港に向かうまでにこんな風に思えただけでも、いつもとは違うルートでテーゲルに向かってみて正解だった。

地下鉄とバスを乗り継いで約40分。テーゲル空港に着いたら、目の前に行列が見えた。ここが展望デッキに上がる入り口なんだろう。

実は空港の展望デッキに上がったこともないので場所もよくわかっていなかったのだ。雨風も強い日だったので係の女性もかなり寒そうにしていた。

雨足が弱るのを期待してデッキに上がるが、しばらくすると逆に雨足が強まってきた。カメラも気をつけていたのにびっしょり濡れてしまった。マスクをしてメガネを掛けているので、曇るわ濡れるわで前がよく見えない。

あー、撮影するには最悪の条件じゃないか。

そんな風に思いながらレンズを拭き拭きシャッターを何度か切る。

デッキから眺めていても、フライトの本数が激減しているのがよくわかった。KLM、エアフランス、ブリティッシュエア、スイス、遠くの方にeasy jetが何機か目に入ってきたくらいだ。

なんとも物寂しい状態である。しかも雨。

空港内に入ってもいつものような混雑した空港ではなく、ゲートもいくつかが稼働しているだけ。ショップも閑散としており、最後のセールが行われていた。

コロナ禍での空港閉鎖というのも何だか物悲しいものがある。

目的もなくただ何となくぶらぶらと六角形の空港内を一周してみた。空港に行く際は当たり前だが目的地があり、そこへ向かうために空港を使うので違和感しかない。しかも到着する誰かを待つわけでもない。

気付いたらため息をつきながらベンチに座っていた。

カメラの液晶モニターも水浸しになったせいかブラックアウトしたままだ。

何だかやり切れなくなり、コーヒーでも飲もうかと思っていたが、早々にバスに乗って引き上げてしまった。

バスに乗る前に今まで気付かずに通り過ぎていたプレートが目に入った。

1990年にベルリン市がパンアメリカン航空に感謝を込めて記念プレートを設置したようだ。1950年から1990年までの困難な時期にベルリンと自由な世界を結ぶ役割を果たしてくれた、というような内容になっている。

戦後から壁建設、壁崩壊を経た歴史ある空港。ベルリン市民からも愛されてきたのだろうと思う。もうここからどこかへ飛び立つことはなくなるが、またふと気が向いたら立ち寄ってみたい。今度は晴れた暖かい日に。


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