ドイツの大きな国際ブックフェアといえば、フランクフルトとライプチヒで毎年開催される見本市が有名だ。
今年も先週末にかけての数日間、フランクフルトで第71回ブックフェアが開催された。プレスリリースによると、2019年の来場数は30万2267人で昨年比で5,5%増えている。出展者数も104カ国から7450とその規模は世界最大を誇る。
2019年のブックフェアでも数多くのイベントやディスカッション、パーティーやミーティングの場が設けられ、ソーシャルメディアなどを利用したインターアクションも積極的に行われた。専門業者や一般客からの反応も上々だったのだろう。
ドイツではかなり重要な位置を占めるブックフェアだが、日本の場合はどうなのだろう。気になったので少し調べてみた。
日本で国際ブックフェアが最後に行われたのが2016年。それ以降はなんと開催の見通しが立っていないという。なぜなのか。以下にその疑問に答えてくれる記事を見つけたので一部引用しておく。気になる方は本文も読んでみてほしい。
日本で2016年まで行われていた国際ブックフェアは、「東京国際ブックフェア(TIBF)」と呼ばれ、その前身は日本の主要な出版社が集まり組織する日本書籍出版協会(書協)が、出版事業の発展と出版文化の向上を目指して1984年に始めた本の総合展「日本の本展」だった。それを1994年から産業見本市などの運営に携わるリードエグジビションジャパン(リード社)が書協と連携した実行委員会とともに、大規模なTIBFへと発展させたのである。まさに出版社に勢いがあった時代を象徴する国際ブックフェアのスタートだった。
全国出版協会の調査によると、日本の出版産業は、1996年の書籍と雑誌を合わせた売上高2兆6564億円をピークにダウン。2018年は売上高1兆2921億円とピーク時の半分以下になってしまい、業界に元気がなくなっているのは事実だが、それでも新刊の発行点数は世界第7位の出版先進国なのである。
「出版先進国」日本で国際ブックフェアが再開されない不思議
新刊の発行点数が世界第7位の日本でなぜ国際ブックフェアが開催できないのだろう。
ドイツやロシアなどで暮らしてみて(ロシアの場合はわずか半年ほどではあるが)感じるのは、インテリ層の厚さだ。文化事業も国を挙げて行われているイメージがある。
特にロシアでは文学に対する関心が非常に高い。日本人で三島由紀夫や川端康成、夏目漱石を読んでいないともはや話にならないのである。村上春樹についてはグレゴーリイ・チハルチシヴィリという現代日本文学の翻訳研究者かつ人気推理小説作家が翻訳を手がけていることもあり、知人友人の誰もが知っていたのには驚いた。
それに比べると、日本における文学の重要性というのは年々低下する一方なのではないだろうか。話題性のある「インフルエンサー」の書いたビジネス本の類ばかりがベストセラーになる。読みやすい本ばかりが売れている時代だ。
文化予算について面白い比較を見つけたのでグラフィックを貼っておこう。残念ながら2015年度に関する報告で少しデータが古いのだが、傾向は掴めると思う。尚、ロシアに関するデータはここでは見られなかった。
それぞれの内訳について割合が高いものは次のとおりである。「文化財団」:プロイセン文化財団、ドイツ連邦文化財団、「メディア」:ドイチェ・ヴェレ、「博物館」:ドイツ歴史博物館、ドイツ連邦歴史館財団、ドイツ連邦芸術展示館、「公文書館」:ドイツ連邦公文書館、「ベルリンにおける芸術・文化の振興」:ベルリンにおけるドイツ連邦主催文化事業、ユダヤ博物館、「映画」:ドイツ映画振興基金、「その他」:映画、歴史認識、ドイツ国立図書館、文化財の保存·保護、音楽など。文化財団408(23%)メディア400(22%)博物館152(9%)ドイツ国家保安省文書館147(8%)公文書館121(7%)ベルリンにおける芸術・文化の振興117(7%)映画108(6%)その他334(19%)(単位:億円)
諸外国の文化予算に対する調査報告書 株式会社野村総合研究所
日本での国際ブックフェアの再開を望みつつ、機会があれば来年のライプツィヒかフランクフルトの国際ブックフェアにも実際に足を運んでみたいものである。
なぜかプレスの写真があまり良くないので、写真が載せられなかったのが残念。。
参考:ダイアモンドオンライン/「出版先進国」日本で国際ブックフェアが再開されない不思議
Frankfurter Buchmesse / Frankfurter Buchmesse endet mit deutlichem Besucherplus
野村総合研究所 / 諸外国の文化予算に対する調査報告書 2015年3月