ドイツはカードゲーム大国だ。そんなドイツから一風風変わりなカードゲームが発売された。
その名もSTASI RAUS, ES IST AUS!
ここでいうSTASIとは東ドイツの秘密警察・諜報機関を総括する省庁、国家保安省(Ministerium für Staatssicherheit、略号: MfS)の通称であるシュタージ(Staatssicherheit)を指す。
全盛期には対人口比でロシアのKGBやナチス政権下のゲシュタポを凌ぐ規模で活動していたそうで、何とも物騒なカードゲームだ。
ロシアにもKGBをテーマにしたカードゲームなどがあるのだろうか?
ドイツに長く住んでいるものの、この手のカードゲームやボードゲームの類にはまだ一切手をだしてもいないし、触手を伸ばす気配も全くみえない。
ただ、この「シュタージ」のカードゲームだけは何だかとても気になる。東ドイツ出身者にとってはひどいパロディー版にはならないのだろうか?親友だと信じて疑わなかった知人が、信頼していたお隣さんが実はシュタージだった、などトラウマにしかならない経験をした人々が実際に数多く存在するだろうから。
それらの事実も引っくるめてカードゲームに落とし込んでいるのだろうか?その内容が気になって仕方がないのである。
カードゲームをしながら歴史を学ぶ、というコンセプトの元にきちんと作られた印象を受ける。1989年11月に市民運動による圧力のもと、DDR政権は事実上崩壊した。壁崩壊より前に当たる11月6日に国家保管省のエーリッヒ・ミールケによって既に書類の破棄が命じられていたのである。
シュタージのために働く、というのがゲームのルールとなっている。シュタージの視点に立てるわけだ。市民がシュタージ本部に乗り込んでくる前にいかに多くの書類を破棄できるか、というのがゲームの内容だ。
2人から5人のプレイヤーで行うことができ、特に遊び方の説明を事前に読む必要もない。カードの指示に従ってゲームを進行することができる仕組みになっている。
このカードゲーム、2020年1月15日に発売になったばかり。一足先に遊んでみてはいかでしょうか?発売日から遡ること、30年。1990年1月15日に市民が国家保安省に押し入るまで100人にも上るシュタージ職員の手によって多くの秘密書類が闇に葬られている。市民らの介入によって、さらなる書類の破棄は食い止められたわけだ。
Playing Historyのミヒャエル・ガイトナー(Michael Geithner)とマーティン・ティーレ=シュベッツ(Martin Thiele-Schwez)によって、このカードゲームは作成されている。
本来は学校の授業で使われることを念頭に置いて作られたそうだが、もちろん家庭用として遊ぶこともできるので是非。
カードには英語でも指示表示がされているので、歴史好きの人にはいいお土産やプレゼントになるかもしれない。
参考サイト:Playing History: Stasi rasu, es ist aus!