先日の記事で母語のドイツ語教授法に関する疑問点について述べたが、今回はその対策についてまとめてみたい。
今のドイツの小学校でまだ一般的なドイツ語教授法は「聞いた通りに書く」Schreib nach Gehörという方法だ。この教え方による弊害がメディアでも伝えられているが、一部の州を除いて今も変わらず同じやり方で授業が進められている。
定義:ベルリンの小学校規定ではLRS(Lese- und Rechtschreib-Schwierigkeiten)「読み書き困難症」が問題だとされている。
その他の呼び方としてはLese-und Rechtschreib-Schwäche, Lese- und Rechtschreib-Störung(読み書き障害), Legasthenie, Dyslexie(ディスレクシア)などがある。通常、どの呼び方も同意語として使われ、LRSが省略形として頻繁に用いられる。
診断:
国際疾病分類(ICD-10) では、LRSは部分的能力障害として分類されている。3ヶ月から半年にわたり、神経内科疾患や不登校、一般的な学習障害が原因ではない書き言葉の習得に多大な困難が見られるとLRSの診断が下される。心理学者や精神科医がIQテストなどの決められた方法をもとに診断する。
諸症状:読むのに時間がかかる、スラスラ読めない、文中の単語のアルファベットを別のアルファベットに置き換えてしまう、行を飛ばす、文章理解力が足りない、などが挙げられる。書く方について言えば、アルファベットを飛ばす、アルファベットを別のアルファベットと入れ替えてしまう、間違いがとにかく多い、などの点が指摘されている。
普段から、子供のドイツ語学習の際に上記の点を念頭において、観察することをお勧めしたい。もし何らかの疑問点が見つかれば、次に上げる各機関で相談することも可能だ。
問い合わせ先:次に上げる各専門機関のホームページにも役立つ情報が記載されている。
- Bundesverband Legasthenie und Dyskalkulie: www.bvl-legasthenie.de
- Berufsverband Deutscher Psychologen: www.bdp-klinische-psychologie.de
- Duden Institut für Integrierte Lerntherapie: www.duden-institute.de
今年の初めに相方がベルリンのアレクサンダー広場にあるDuden Institutで、娘のドイツ語力について相談に乗ってもらったが、そのために成績表とドイツ語で書いたテキストをサンプルとして持参していた。
結果としては今すぐ何らかの処置が必要だと判断されず、そのままで終わってしまったが、娘のように平均以下だが、壊滅的ではない、というレベルの子が特になんの処方も得られず苦労するのではないか、と感じてしまった。
小学校では週に一度、30分だけドイツ語の特別コースに通っているが、週一30分でそれほど効果が期待できるとも正直思えないからである。家庭学習は本人にやる気がなければ効果は得られない。
子供のドイツ語力に首を傾げるような点があれば、できるだけ早めに専門家に相談されることをお勧めしたい。
費用:気になる費用だが、基本的に保険などの対象にはなっていないため、保護者が自己負担することになる。しかし、青少年省(Jugendamt)が場合によっては費用を肩代わりしてくれるケースがあるそうだ。申請に必要な書類は青少年精神科医あるいはスクール・サイコロジスとのステートメント(証明書)である。
参照記事:Tagesspiegel: Wie erkennen? Was tun? Und wer bezahlt’s?