Fibel-Methode / 昔ながらの教授法〜母語としてのドイツ語

前回、ベルリンの小学校に通う子供たちのドイツ語学習に対する疑問点について触れた。問題になっている教授法は“Lesen durch Schreiben”あるいは“Schreiben nach Gehör”というもの。

この“Lesen durch Schreiben”というコンセプトだが、2009年に亡くなったスイス人、ユルゲン・ライヒェンによって提唱されたものだ。彼は「書き」が「読み」より先に来るべきだ、という考えであったようだ。

Die Schüler sollen primär befähigt werden, jedes beliebige Wort in seine Lautkomponenten zu zerlegen und sie phonetisch vollständig aufzuschreiben – orthographische Korrektheit steht zunächst nicht im Vordergrund.

書くためには古典的なFibelを用いず、子供達は発音表(Anlauttabelle)の助けを借りてひとつの単語を音の要素としてバラバラにし、それらを音声的な組み合わせによって書く、というやり方だ。

言葉で説明するのが難しいが、例えばEidechse(とかげ)の場合、Ei-de-chseにわけて考えることになるが、結果としてEidäxeと書く子供が続出する。

何が驚きかと言えば、「子供の自主性と創造性を重視する」ために間違いを添削しない、という点だろう。息子の学校で使用している日記帳を見ると、こんな感じでガンガン作文が書かれており正直ドン引きしてしまう。

「話すように書ける」ことで子供にはストレスが掛からないわけだが、やはり初期から正しい綴りを教えることは必須事項なのではないかと思う。

実際、間違いを指摘すると息子は拒否反応を示すわけで、家庭学習を行う際にも非常にやり辛くなる。

Fibeln sind so aufgebaut, dass die Kinder die Schriftsprache in einem fest vorgegebenen, strukturierten Ablauf vom Einfachen zum Komplexen erlernen und einen schriftsprachlichen Grundwortschatz aufbauen. Hilfestellungen und Korrekturen durch die Lehrperson gehören dazu.

古典的なFibelが何かというと、単語を決められた規則に従ってひとつずつ積み重ねて学んでいくやり方である。もちろん先生の添削も学習過程に含まれている。

ボン大学がNRW州の3000人の小学生を対象にドイツ語能力調査(Hamburger Schreib-Probe)を行なったのだが、その結果が大きな世論を呼び起こした。詳細はリンクをご参照のこと。

合計1万のディクタートの結果が明らかにしたのは、古典的なFiebelで習った子供たちは学年を問わず全体的に間違いが明らかに少ない、という事実だったからだ。

  • „Lesen durch Schreiben“ の生徒はFiebelの生徒に比べ、55%以上が不正解であった。
  • „Rechtschreibwerkstatt“の生徒はFiebelの生徒に比べ、105%の生徒が不正解であった。

この発表が公にされる1年前に実はハンブルクとバーデン・ヴュルテンベルク州では「聞いたとおりに書く」という教授法は禁止されている。NRW州ではFiebelメソッドへの回帰が議論されている。

長女の正書法が弱いのは日本語補習校の宿題を中心に家庭学習を行ってきたことと、バイリンガル家庭だということが主な原因だと考えていた。恐らくこれらも原因のひとつには違いないが、ドイツ語ネイティブの家庭でもLRSなどの問題が普通に存在する、という事実を知ることで今後の対策が練りやすくなった。

まずはFiebelメソッドの本を購入して、比較しつつ、家庭学習に取り入れてみたいと思う。

Jülのシステムといい、Schreiben nach Gehörメソッドといい、どうしてドイツの小学校、特に子供たちの通うベルリンの小学校にはなぞのシステムが導入されがちなのか、機会があれば改めて専門家に質問を投げてみたいところだ。

少しでも参考になれば幸いです。ご指摘、ご意見などもお待ちしております。

参照:
mdr: Bundesbildungsministerin fordert Rückkehr zur Fibel-Lernmethode
Uni Leipzig: Lesen durch Schreiben: Methode zum selbstgesteuerten
Schriftspracherwerb in der Primarschule nach Jürgen Reichen

WDR2: Studie: Rechtschreibung lernt sich nach alter Fibelmethode am besten



Comments

“Fibel-Methode / 昔ながらの教授法〜母語としてのドイツ語” への2件のフィードバック

  1. […] の区別を明確にするためで、Fiebelメソッドではないかと思う。 […]

  2. […] ・聴覚をもとに書く・昔ながらの教授法〜母語として書く・ベルリンの学校危機 […]

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