先日のツイートでドイツの「ホームスクーリング事情」についてまとめた記事をリツイートしたのだが、この記事がなかなか読み応えがあったので以下、いくつかの例を挙げておこうと思う。
FAZ(フランクフルター・アルゲマイネ紙)の1月12日付の記事「生き延びられればそれでいい」というタイトルの読者によるホームスクーリングについてまとめられたもの。
ロックダウン中のドイツでは今月から学校閉鎖のため家庭学習を強いられている家庭がほとんどだ。子供を持つ家庭にとっては、今、一番共感を得やすいタイムリーな記事なのだろう。
まずは冒頭の”Alles ganz anders“「すべてが全く違う」から引用してみよう。
私はフルタイム勤務で子供がふたりいます。ディスタンス授業というのは私たちにとっては「授業がない」ということと同義です。なぜ既に10ヶ月もオンラインで仕事をしているのに、学校はオンライン授業ができないのでしょうか。学習内容をオンラインで説明するのはそんなに大変なことでしょうか。なぜ私が説明できないことを子供に説明する必要があるのですか?
科目ごとに子供たちは少なくとも3つの質問があります。つまり、平均すると18もの質問があることになります。例えば物理です。「工事現場のレーザー光線」についての問いはこうでした。「この光にはどのような特徴がある?」私私はそんなことは知らない。子供よ、私にはわからない。
15時半に食事の準備をしました。歴史とドイツ語を終えましたが、数学と英語は幸運にも子供たちが自分たちだけでやりました。私は化粧もしていなければ、まだ一歩も外に出ていません。やっと今から少し仕事に取り掛かることができるわけです。19時に夫が仕事場から帰宅し冗談を言いましたが、私には笑うことができませんでした。明日は夫の番です。私は自分に誓いました。明日は自分の仕事しかしない、と。(匿名)
FAZ „Es geht nur noch ums Überleben“
フルタイムでホームオフィスをしている人にとって、「家庭学習」などほとんど意味をなさないことが手に取るようにわかる。この匿名で語っている女性はまだいい方で自分のパートナーと恐らく週の半分ずつを家庭学習の日に当てているのだろう。
ドイツ人でもこれだけ負担になるのだから、家庭学習を一手に引き受けている外国人の気持ちを少しは察して欲しいものだと思う。
子供たちの質問に答えるだけでも至難の技なのだから。それでも、今はネットで検索すればある程度の答えは提示することができるし、なんなら子供たちに自分で検索できるようになってもらうのが近道なのだろう。
夫の冗談に笑えない、という下には思わず苦笑い。笑えるわけがないじゃないか。
“Wir haben Fußball gespielt“「サッカーをしたよ」からは以下を引用しておく。
私には幸運にも子供を「学童」にやる権利があります。4年生の息子のために。7時45分に学校に行くので普段通りです。学校に負担にならないように、昼食後にひとりで帰宅することができるのですが、それまでに学校で何をしているのかが不思議でなりません。前日にもちろん今日の課題を全て印刷し持たせています。私が「どうして課題プリントを1枚しかしていないの?」と聞くと「時間がなかった。サッカーをしていたから!」
16時半にシフトから帰宅した私にはもうエネルギーなんて残っていません。子供たちに課題に取り組むモチベーションを与えられない先生たちにはがっかりです。もちろん私は仕事の休みの日に息子と一緒に課題に取り組みます。そのために私が週末も働けるのはいいことです。私が息子に緊急学童が少なくとも1月末までは続くと伝えると息子は泣きました。彼はまた普通に学校に通い、友達に会いたいのです!(カタリーナ・ユットナー)
FAZ „Es geht nur noch ums Überleben“
これも非常によくわかる状況だ。なぜなら通常の学童をとっても、宿題や授業中にできなかった課題をやる日、というのが決められているにもかかわらず、そこでそんな対応がきちんとされている印象を受けた試しがないからである。
学校が休校中で教員や保育士が足りていない「緊急学童」で学習サポートがきちんとされているとは到底思えない。
次はあるギムナジウムの生徒による投稿だ。”Fast jeden Morgen ist das System überlastet“「ほぼ毎朝システムがダウン」というタイトルに思わず苦笑い。どこも似たような状況なのだろう。
私はギムナジウムの11年生でホームスクーリングは2度目になります。最初のロックダウンではオンライン授業で使用しているシステムが頻繁にダウンしましたし、教師もテクニックについて行けていない印象を持ちました。提出した課題の評価についてもいつまで経ってもフィードバックがもらえませんでした。それでも、これらの問題に理解はありました。
今、私たちは再びオンライン授業を受けています。そして悲しいことに状況はほとんど変わっておらず、さらに悪化しているとも言えるのです。ほぼ毎朝、システムがダウンして授業が行われません。この問題を学校自体が解決する術はありませんが、ロックダウンも2回目なのでせめて問題が起きる頻度を少なくする努力はできたはずです。学校側も教師にデジタルメディアの使用を教えることはしたのですから。
私は2022年の春にAbitur(卒・入学試験)を受けるグループに属しています。しかし、私たちはそれまでに必要な学習内容をきちんとカバーできないのではないかと危惧しています。適したオンライン授業は現在私の学校では行われていません。これはとても残念なことです。多くの生徒はロックダウン中でもとてもモチベーションが高いのです。彼らは学校の勉強に取り組みたくてもそれができないため、フラストレーションを抱えています。政府による対策がなされ、それにより学校運営が再び通常通りに行われることを切望しています。(ヨハンナ・ラッツマン)
FAZ „Es geht nur noch ums Überleben“
彼女の言う通り、州政府も政府も1度目のロックダウンからここまで、少なくとも機能する学習プラットフォームの整備や教員に対するオンライン授業のための講習などを設ける時間があったはずだ。2度目のロックダウンだというのに、教師はまだデジタル機器がうまく使えていない印象を受けるし、学習プラットフォームもすぐにキャパを超えるのか頻繁にダウンしている。
ただでさえ、家庭学習でストレスが溜まりがちな保護者と子供たちにとって、オンライン授業がままならない状況というのは理解しがたい事実なのである。
今後、長期化すると予想されている学校閉鎖期間やロックダウン。少なくとも遠隔での授業だけはスムーズに行えるよう尽力していただきたく思う。
他にもいくつか例が挙げられていたので、気になる方は原文の記事にも当たっていただきたい。ホームスクーリングの成功例、といった珍しいパターンの例も掲載されていた。
とにかくドイツ人にとっても大変な現状、外国人として暮らす私たちにとっては言語などの問題でさらにハードルが上がっていることだろうと思う。完璧に全てをこなそうとするのは負担になるばかりなので、気持ちを楽にもって「今日はこれくらいでいいか。」とたまには自分も子供も甘やかしてあげて欲しいと思う。自戒もこめつつ、今日はこの辺で。