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“Nazinotstand?” in Dresden / ドレスデンの「ナチス非常事態?」とは

先日、チューリンゲン州議会選挙に関するあくまでも個人的な考えについてまとめたばかりだが、ドレスデンの市議会における”Nazinotstand?” 「ナチス非常事態?」と銘打たれた極右主義に対する対策決議について考えてみたい。

誰でもまずそのタイトルにギョッとさせられるはずだ。

ナチス非常事態?

一体ドレスデンで何が起こっているんだ、と反応するのが普通だろう。

ドレスデン。エルベ川の南側には旧市街が位置し、ゼンパーオペラやツヴィンガー宮殿、聖母教会など見応えのある建造物の並ぶ美しい街だ。

もうずいぶん前になるが一度「世界不思議発見!」の撮影でドレスデンやマイセン、モーリッツ城などを訪れたことがある。

まだドレスデンでPEGIDAの集会が行われていなかった頃だ。ご存知の方もいるとは思うが、「西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者」(Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlandes)という大層な名前を持つPEGIDAは2014年の10月にドレスデンで初めてデモを行なっている。

メルケル政権が大量の難民を受け入れたのが2015年のことなので、すでにその前から組織されているグループである。ドレスデンから起こったPEGIDAはドイツ各地に広がり、これらの運動が下火になる気配はない。

ベルリンではBÄRGIDA(ベアギーダ)、ミュンヘンではMÜGIDA(ミュギーダ)といったネーミングになっている。この運動は残念ながらドイツ国内に留まらず、欧州各国に広がっているようだ。

さて、ドレスデンの市長、ディルク・ヒルベルト(Dirk Hilbert / FDP )はこの「ナチス非常事態」という表現はザクセン州の州都で起こっている事態とは直接関係がないというスタンスを保っている。

彼にとってこの表現はポピュリズム的であり、本質的な問題を表現する言葉としては適当ではない、という考えを述べている。

ドレスデン市議会は10月30日に「ナチス非常事態?」と題した民主主義と市民社会の強化を決議。英国のガーディアンやBBCなど各国のメディアも市議会の決定について報道した。

いつの間にか、「ナチス非常事態?」から疑問符がなくなり、「ドレスデン」「ナチス非常事態」というキーワードだけがとてつもないスピードで拡散されたのだろう。そして、タイトルの裏側にまで考えを及ばす人の方が少なかったのだ。

ヒルベルトはザクセン州の州都であるドレスデンが極右主義に対してさらに対策を立てることについては歓迎している。しかし、このタイトルについては、言語的なエスカレーションには関わる意思がないとしている。

PEGIDAやAfDなどが意図的に用いるポピュリズム的なシュプレヒコールや言い回しをそれに反対する側まで使用することに全く意味はないだろうし、それはどちらかというと逆効果でしかない。彼らと同じ土俵に乗る必要がそもそもないからだ。

過去数年間での極右シーンにおける暴力や熱狂が増えたのは恐ろしいことだ、とドレスデン市長は続ける。しかし、この現象はドレスデンやザクセン州だけに当てはまることではなく、ドイツ全国や欧州で言えることだ。ドレスデンは極右主義に対する公共認識が他の街より強い。言い換えれば、日常生活上で極右主義的な言動を感じる場面が多い、ということになるのだろうか。

「このことが、我々にこの問題に集中的に取り組むことを余儀なくさせたのです。」

市長は議員仲間に常に状況を甘く見ない方が良い、と注意を促してきた。極右シーンでは驚くべきスピードでオーガナイズできる環境が整っているためだ。「偽りの安全の中にいると、すぐに驚くことになるかもしれない。」

ザクセン州の州都であるドレスデンの状況はすでに危機的状況の向こう側なのだろうか。このような流れが強くなっていくことに懸念を感じざるを得ない。

言葉尻を捉えて無駄な議論をしている場合ではないはずだ。

参考記事: Zeit Online / Dresdner Oberbürgermeister kritisiert Begriff “Nazinotstand”
Zeit Online / Nazinotstand mit Fragezeichen

タイトル写真:Dresden-Panorama: Blick von der Frauenkirche © Christian Borrmann

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