ハーナウの事件 〜Attentat in Hanau〜

今年に入ってからも、ドイツにはあまりいいニュースがない。これまでに気になったニュースを以下に羅列してみよう。

1チューリンゲン州の首相1日で退陣

2019年10月末に行われた州議会選挙では、中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が第1党から3党へ転落したが、逆に極右政党であるドイツのための選択肢(AfD)が第2党に躍進。

その旧東ドイツのチューリンゲン州で就任した首相が1日で辞任に追い込まれたのである。一体どういうことなのか。

今回の混乱の要因はAfDの支持を受けて自由民主党(Linke)のケメリッヒがチューリンゲン州の首相に選ばれたこと、CDUがAfDとともに同候補を支持したことにある。

既成政党が極右政党と協力した、という戦後民主主義下でのタブーが破られた形になったわけだ。

Es handele sich um einen “unverzeihlichen Vorgang”, der “mit Grundüberzeugungen gebrochen habe – für die CDU und für mich”, sagte Merkel bei einem Staatsbesuch in Südafrika. Die Wahl müsse rückgängig gemacht werden, forderte die CDU-Politikerin. Ihre Partei dürfe sich so nicht an der Thüringer Regierung beteiligen.

Tagesschau.de:Ein “unverzeihlicher Vorgang”

「CDU、そして私にとっても基本的信念を挫かれる許されない出来事だ。」と南アフリカを訪問中だったメルケル首相。州議会選挙はやり直す必要がある、ともコメントしている。CDU政党はチューリンゲン州の政治にこのような形でかかわるべきではない、と強く批判した。

ドイツ各地でもこの州議会選挙の結果を受け、多数のデモが行われた。こうした事態を受け、ケメリッヒは就任してわずか1日で辞任する意向を示したのである。

2AKK退陣

1の混乱を受け、今度はメルケル首相の一押しだった時期首相候補であるアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(AKK)が突然の退陣を決めた。

チューリンゲン州議会選挙以前にもしかし、彼女の支持率は低下しており、欧州議会選挙でもCDUが惨敗。メルケル首相に早期退陣を促そうとしたこともあり、党内に混乱を招いていたそうだ。

どちらにせよ、チューリンゲン州議会選挙の結果を受けての退陣劇はタイミング的にもメルケル政権にとって求心力を欠いているというマイナスイメージしか与えかねないのでは、というのが個人的な印象だ。

3ブレーメン近郊ジーケでの事件

In einem Restaurant in Syke bei Bremen ist nach einem Einbruch unbekannter Täter ein Feuer ausgebrochen – nun ermittelt der Staatsschutz. Es gebe Hinweise auf Brandstiftung und auf ein „fremdenfeindliches Motiv“, sagte eine Polizeisprecherin.
Der Eigentümer habe einen Migrationshintergrund. Auf der Rückseite der Gaststätte hatten die mutmaßlichen Brandstifter eine Tür mit Glasscheiben aufgebrochen, darauf wurde ein großes Hakenkreuz gemalt.

WELT :Hakenkreuz und Brand in Restaurant – Staatsschutz ermittelt

今月13日には、ブレーメン近郊のジーケ(Syke)で移民背景を持つ所有者のレストランが放火され「外国人排斥を表明するモチーフ」である鉤十字が現場に残されていた、という事件が起こった。

4ハーナウでの事件

3の事件が飛び火したのかそうでないのかは推測する他はないが、19日にはフランクフルト近郊のハーナウでシーシャバーやカフェが銃撃され、11人が死亡。

死亡した全員が移民の出自を持つ人々だった。

容疑者と見られるのは43歳のドイツ人男性。スポーツ射撃の免許を持っていたため、合法で銃器を所持していたという。

男性は自宅で72歳の母親と遺体で発見されている。

Nach dem rassistisch motivierten Anschlag in Hanau fordert SPD-Generalsekretär Lars Klingbeil eine Beobachtung der AfD durch den Verfassungsschutz. Man müsse das klar benennen, sagte Klingbeil im ARD-morgenmagazin: “Da hat einer geschossen in Hanau, danach sieht es aus, aber es waren viele, die ihn munitioniert haben, und da gehört die AfD definitiv mit dazu.”

Die Zeit: SPD fordert Beobachtung der AfD durch Verfassungsschutz
© picture alliance/Andreas Arnold/dpa

この人種差別的な動機による事件の後、SPDの事務総局長ラース・クリングバイル(Lars Klingbeil)は憲法擁護庁によるAfDの監視を要求した。「ハーナウでひとりが銃撃した。その後にしかし、彼を武装させたものが多く存在したことがわかった。そしてそこにはAfDも間違いなく属している。」と朝のニュース番組でクリングバイルは述べている。

AfDの党員による公での発言や現在の政治的状況もそうだが、私が個人的に危惧している点は、このような事件がハーナウで終わるのではなく、今後ドイツ各地に飛び火するのではないか、という点に尽きる。

これら一連の出来事から改めて感じることは、ドイツには残念ながら変わらず根強い「差別」というものが存在している、ということに他ならない。そして、この事実はおそらく世界中に当てはまることなのだろう。

壁崩壊後の喪失感であったり、大量の移民・難民を受け入れた2015年然り、AfDという極右政党の躍進であったり、中国を発端とするコロナウイルスの脅威など、何か明確なきっかけがあれば人々の意識の水面下に潜んでいる「差別的な感情」のようなものが表層に現れてくるように思う。

「差別的な感情」に対して具体的にどういったアクションを起こせば良いのか正直なところ私にもまだよくわからない。

ただ、自分が知らないことやよくわからないことに対して蓋をしてなかったことにすることだけは避けたい。



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