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海外生活のメリットとデメリット〜その②デメリット編〜

前回の投稿ではメリット編として5つほど良い点を挙げたが、今回はその逆のデメリットについて考えてみたい。
当然ながら、メリットよりデメリットの方が書くのが辛いかもしれない。

1 これまでの自分とのギャップに苦しむ

日本である程度、学歴や職歴を経た上でドイツにやってくると、ドイツ語ありきの環境になってしまうため、
これまでの社会的評価がどうしても下がってしまう。そこで、日本での自分とドイツでの自分を比較し自己肯定感が
下がってしまう人もいるかと思う。「こんなはずではなかった」と誰でも一度は頭を抱えたことがあるはずだ。

言語能力以前に高い専門性を持つ人であれば、言語力不足によるギャップを埋める事は可能かもしれない。
芸は身を助ける、という場面は大いにある。

仕事をする上でもそうだが、慣れない海外での育児についても同じことが言える。幼稚園や学校などで、仮に理不尽なことが
あったとしてもスラスラと言葉が出てこない分、戦闘能力も落ちる上、かなりのストレスになるためだ。幼児期には
日本人や現地ママとの結束が固くなるのにも頷ける節がある。情報交換や収集、助け合いがとても大切な時期だ。
産後うつなどを避けるためにも身近に逃げ道はできるだけ作っておく方が安心だ。

2 物事の進展に時間がかかる

とにかく何をやるにも一筋縄ではいかないことの方が多い。AからBまでの移動ひとつを取っても、やれストライキだ
デモだと行手を阻まれる。空港や航空会社も平気でストを決行する。
役所の手続きや病院の通院などについても、最初の一歩がなかなか踏み出せない。予約が取れないからだ。
できることなら、予約を取るスキルはつけておいた方がいいかもしれない。今はオンライン対応のところが増えたが、
電話の方が早いという場合もあるからだ。やっと予約が取れたと思っても、担当者間をたらい回しにされてなかなか本題に
入れない、という展開も待ち受けていたりもする。とにかく最後まで諦めないで、うまく担当者に動いてもらうしかない。
運良く手続きが一通り終われば、あとはなかなか来ない連絡を待って、めでたく終了である。ご武運を!

3 有事の際に日本へすぐに帰ることができない

筆者はこの点については約3年間続いたコロナ禍で嫌というほど思い知らされた。その後に続く世界情勢の不安定さも
さらに輪をかけているように感じる。平和なうちはいいが、戦争や疫病の蔓延といった予測不可能なできごとにより、
日本へ帰るハードルが突然上がってしまうことがあるからだ。

コロナ禍にはフライト本数の激減やホテルでの隔離、各種証明書の準備など通常では考えられないほどの煩雑な手続きが必要になった。
今の世界情勢に伴うフライト料金の高騰などを鑑みても、日本までの距離が実質どんどん遠くなっているように思える。

4 タイミングを逃すと本帰国が難しくなる

本帰国を考えるタイミングというのは長く住めば住むほど難しくなるような気がしている。過去に独身でフルタイム勤務の際に
東京で働かないか、というお話をいただいたこともあった。あの時に本帰国をしていたら今とは全く違った生活を送ることに
なっていただろう。そういったターニングポイントのようなものが何度かくるわけだ。

その後、結婚や出産を経て、子どもたちが小学校に上がると言語的側面からも日本への本帰国は難しくなる。
いずれ帰ることを念頭に置いているのであれば、帰るタイミングをよく考えておいた方がいい。家族単位、特に幼児期を過ぎた
お子さんのいる家庭はそうそう簡単に移動できなくなるケースが多いからだ。

5 海外生活というものは何かを犠牲にして成り立っている

若い頃はとにかく「外に出てみたい!」という単純明快な動機でベルリンに渡ったが、今から思えば日本でも一度で
いいから社会人を経験してみたかったと思うことが稀にある。
同じ業界の方が日本でどんどん出世していく様子を遠くから眺めながら、羨ましく思ったことすらある。
困ったときに本当の意味で味方になってくれるであろう友人や家族が日本にいる、というのもなかなか厳しいものだ。

ただ、これも全て「たら」「れば」の想像範囲である。自分も年を重ねていくうちに考えが変わってきた。
数年前から実家に戻ったときにいろいろと考えることが増えたのは確かである。

若い時は何でも勢いでできるものだが、年を重ねて自分だけの人生でなくなったときに果たして何を優先するべきなのか。
そんなことを考えるようになるとはさすがに予想だにしていなかった。もちろん自分の人生なので、全て自分の責任でここまで
来たわけだけれどベルリンに30年近く住むことになるなんて夢にも思わなかったし、いつか日本に帰りたくなる自分を想像したこと
すらなかった。気付けば日本にいるよりドイツの首都であるベルリンに住んでいる時間の方が長くなった。

デメリットを5つほど挙げてみたがメリットの方も是非読んでみて欲しい。そして「海外生活をしてみたい!」と思っている人には
是非一度海外に出てきて欲しいとは思う。ある意味、若い時にしかできないことかもしれないからだ。ただ、帰りたいと思ったのなら、
その気持ちをしっかり受け止めて足取り軽く帰ればいいと思う。

海外生活が気付いたら長くなっていただけなので、こうすればいい、なんていう助言など到底できないけれど、あなたの海外生活が
実りあるものになりますように。結局のところ、やりたいことをやりたい時にやればいい、ただそれだけだと思っている。

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