ベルリンで好きなものを挙げろ、と言われれば間違いなく「カフェ」と答えるくらい、この街のカフェが好きなのだが、数年前から少し気になっている事がある。
近所のカフェで注文しようとすると、こちらがドイツ語で話しかけているにもかかわらず、英語で返されることがかなり普通になりつつあることだ。
昔からあるカフェではそんなことはないのだろうが、どうやら新規の店で見られる傾向らしい。そう、所謂ヒップなカフェとかいうやつだ。
この傾向はベルリンでも特に観光客やスタートアップ企業に人気のミッテ、クロイツベルク、ノイケルン、などで顕著なのだそうだが(ノイケルンでさえ今となっては「ヒップ」な地区入りらしい)どうもベルリンという街には削ぐわない気がするのは私だけではないはずだ。
上の写真のカフェでは英語のメニューが1ページ目、ドイツ語が2ページ目になっていた。
ベルリンもようやく国際的でオープンな街になった、と喜ぶべきなのか。どうも不自然で胡散臭い。そう感じてしまうのはなぜなのか。
相方が「カフェで英語しか通じないって、君みたいなこと言ってた政治家がいたよ。」と夕食の支度をしている時に教えてくれた。おお、違和感を感じているのは私だけではなかったんだ!
早速、検索してみたところCDUのJens Spahn(37)によるSprechen Sie doch Deutsch!という記事にたどり着いた。彼曰く、「ベルリンの多くのレストランで給仕が英語でしか対応しないことにイライラする。」とのこと。
CDU-Präsidiumsmitglied Jens Spahn (37) seinen Unmut geäußert. Ihn stört, wenn er in der immer internationaler werdenden Hauptstadt mit der deutschen Sprache bisweilen nicht mehr weiterkommt. „Mir geht es zunehmend auf den Zwirn, dass in manchen Berliner Restaurants die Bedienung nur Englisch spricht“, sagte der Staatssekretär im Bundesfinanzministerium der „Neuen Osnabrücker Zeitung“.
この発言を受けて、ツイッター上でも大きな反応があったそうだ。„I’m feeling so sorry for him. Poor guy.“と敢えて英語でツイートしたのはSPDのJuliane Seifert。嫌味たっぷりである。
Auf Twitter gab es ein großes Echo. „Ja. Dass alle auch Deutsch sprechen oder lernen, das dürfen wir von jedem Zuwanderer erwarten. Von jedem Touristen nicht, @jensspahn“, schrieb der Grünen-Bundestagsabgeordnete Volker Beck. Der Chef der FDP in Rheinland-Pfalz, Volker Wissing, twitterte: „Und wie viele Kellnerinnen und Kellner wohl von Jens Spahn genervt sind???“ Juliane Seifert, Bundesgeschäftsführerin der SPD, schreibt: „I’m feeling so sorry for him. Poor guy.“
恐らくSpahn氏に賛同するツイートもあったのだろうが、このZeitの記事には批判的な意見のみが羅列されており、Spahn氏がそれらの批判に対して以下の点で自らの考えを述べている。
- ドイツ人のドイツ語に対する態度
- 多様性と均一化
- 若者の特定のクラスタ
- 移民と現地語
- 現地語で話すことの重要性 などなど
格安チケットで気軽に海外旅行ができる世の中にはなったが、どこに行ってもスターバックスがあり、Airbnbで予約したアパートにはIKEAの家具が置かれ、街角のカフェでは英語でオーダーができる。
これでは何だか物足りないし味気ないと感じるのは、果たして時代錯誤なんだろうか。便利になった分、失うものも多いのだ。
フォルクスビューネの監督交代の際にも、国際的な都市の劇場では英語で上演するべきだ、というような馬鹿げた発言も飛び出したが、これにもどこか通じる話なのではないか。自国の言語や文化を蔑ろにするようになっては元も子もないのである。
ところで、写真のような本屋に併設されたカフェスペースがたまらなく好きである。ここは割と新しい書店だが普通にドイツ語でオーダーができた。
90年代のベルリンでは考えられなかったことだが、最近街中を歩いていて英語を耳にすることが格段に増えた。
国際都市を目指すのであれば、せめてドイツ語と英語の二カ国語で対応して欲しいものだ。