I Hope…塩田千春さんの個展〜Königsgalerie〜

昨年11月1日に滑り込みでハンブルガーバーンホーフ現代美術館にカタリーナ・グロッセ展を観に行ったのを最後に長期ロックダウンに突入したベルリン。

今年に入って文化イベントに参加できたのはとギャラリーが再開した週、3月12日に足を運んでおいたケーニヒ・ギャラリーの塩田千春さんによる個展と翌月4月3日のベルリナーアンサンブル(Berliner Emsamble)のパイロットプロジェクト公演のみである。

パイロット公演についてもまとめておこうと思っているうちにもう4月末になってしまった。

ロックダウン中にようやく条件付きで再開はしたものの、またいつクローズしてしまうのか見当も付かない。そんな焦燥感に駆られ、半ば無理やり予定を詰め込んで展示を観に行ったのだ。

子供たちに独特のインパクトがある塩田さんの作品を見て欲しいと思ったこともあり、歯医者の予約が入っていた日にギャラリーを経由することにした。

クロイツベルク地区の住宅街の中に突如現れる無機質な建造物と後ろ姿で王様(ケーニッヒ)とわかる湯たんぽのオブジェ。それがケーニッヒ・ギャラリーの目印だった。

ベルリンには数えきれないほどギャラリーが点在するが、こんな風にギャラリーの入っている建物を訪問するのも楽しみのひとつ。ここは、以前は教会だった建物をギャラリーとして利用しているようだ。

ロックダウン中ということもあり、ギャラリーを訪れるのにも事前に予約を入れておく必要がある。タイムスロット毎に人数制限をすることで密にならないよう工夫がされている。

金曜日の午後だったこともあり、訪問者は多い方だったように思う。子供たちは作品を見るなり「すごいな。これ、全部ひとりで作ったんかな?」と思い思いに感想を述べていた。娘は写真を撮るのに一生懸命である。

空間の使い方も素晴らしく、左前方の窓から光が差し込んでいるのが印象的だった。

スチール製のボートと階段。赤い糸で吊り下げられているのは、訪問者が書いた手紙である。

赤い糸の織りなす影も美しい。

塩田千春さんの作品から受ける個人的なイメージはどちらかと言えば「逃れられない記憶」「過去」など重いものが多かった。ずいぶんと前になるがNHKの番組制作でベルリンのご自宅を撮影させて頂いた際に部屋にびっしりと編み込まれていた赤い糸の強烈なイメージが忘れられない。

それ以降、実際に作品を観る機会に恵まれなかったのだが、こうやって今回コロナ禍にまたこうして彼女の作品を目にすることができたのは幸運だった。

「ママ、この紙に何か書いてあるで。」
「あそこにボートがある!」
「めっちゃ大きいな。」

子供たちの感想は率直で分かりやすい。頭が柔軟なうちに色んなモノを見ておいて欲しい。そういう意味でもコロナ禍の各種制限は機会の喪失に繋がっているのだ。

残念ながら関連作品である「第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」の日本館での展示作品を実際に目にしたことがないのだが、このI Hope…という作品から受ける印象は「生命力」「先の見えない未来」「前進」そして「希望」かもしれない。パンデミック下に制作された作品にはどこか人を奮い立たせる力がある。

ケーニヒ・ギャラリーでの展示作品は3D映像で以下のリンクより展覧が可能になっている。興味のある方は是非この作品を体験してみて欲しい。

CHIHARU SHIOTA
I HOPE…
12.JANUAR-21.MÄRZ 2021
König Galerie NAVE
3D RUNDGANG


残念ながら、「緊急ブレーキ」に関する連邦レベルのルールが制定されたことにより、また美術館やギャラリーといった文化施設がクローズすることになってしまった。早めの再開を期待しつつ、今日はこの辺で。



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