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新ナショナルギャラリー「できうる限りミースらしさを」〜Neue Nationalgalerie〜

2021年8月22日からオープンしている新ナショナルギャラリー。展覧会をする前の空っぽの状態で一般公開されていたのが、6月初頭だった。オープンデー最終日にあたる6月7日に足を運んでから、もう2ヶ月以上も経っているのだから驚きだ。

まだ工事中かのような外観(奥の黒い建物が新ナショナルギャラリー)

noteの方では軽く当日の訪問の様子を書いたのだが、ブログの方ではもう少し詳細についてまとめておこうと思う。

もうすっかりクローズしたタイミングを忘れてしまっていたが、この改修工事の構想プランは2015年にスタートし、2016年から今年2020年まで4年という歳月を掛けて実現している。ベルリンの(改修)工事が長いのは、BERの新空港などがそのいい例である。

さて、新ナショナルギャラリーの改修工事のモットーは”So viel Mies wie möglich.”「できうる限りミースらしさを」というもの。バウハウスの第3代校長も務めたルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)の設計で1968年に完成した建築である。

直線的な構造と大きなガラスが特徴的なシンプルな設計である。

約50年間、数々の展覧会が行われた建物だが、改修の必要性は免れなかった。使い古されたカーペットや壁の劣化、有害物質の除去などに加え、冷暖房や火災対策、スロープやエレベーターの設置なども含まれている。できうる限り元の建築を再現するために必要な建築素材や建築技術も不足していたという。

3万5千以上に及ぶ部品を取り外す必要があり、全てのパーツには照会IDが付けられデータベースによって管理された。ベースの改修工事が終わったタイミングで修復及び洗浄されたそれぞれのパーツを元の位置に戻す作業が行われている。スロープやエレベーター、現在の用途に合う倉庫やクローク、ミュージアムショップなどは新たに設置された。

中でも大きなガラスプレートの取り替えが大変だったようだ。ファサードのもたらす圧力でガラスが損傷していたためである。1980年代にガラスの製造方法が変わったことから、建物にあう大きなサイズのガラスが製造できるのは中国にある1社のみだったというのだから驚きだ。

ミースとリリー・ライヒによってデザインされたバルセロナチェア

これらの改修工事はデイヴィッド・チッパーフィールドおよび彼のベルリンチームによって行われた。デイヴィッド・チッパーフィールドは2009年に再オープンしたベルリン新博物館の修復を手がけており、ベルリン博物館島と呼ばれる5つの重要な美術館・博物館群(新博物館もそのひとつ)のマスタープランも築き上げている。プロイセン文化財団のプロジェクトと相性がいいのだろう。

2021年という年はベルリンにとって「オープン」の続いている年でもある。ベルリンの新名所といえるフンボルト・フォーラムに続き、地下鉄U5番線の延伸工事終了と「博物館島」駅のオープン、新ナショナルギャラリーの再オープン。コロナ禍の停滞した空気を吹き飛ばしてくれるかのような文化事業関連のニュースは、ベルリンという街にとってもポジティブに作用するはずだ。

「建築は文法という決まりに基づく言葉のようなものだ」

建築家として詩人の域に達していたミースの言葉を最後に引用しておきたい。

8月22日からAlexander Calder. Minimal / Maximalという展覧会も始まっているようなので、近々足を運んでみようと思っている。今年の秋から冬にかけてクローズすることなしに乗り切れることを願いつつ。

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参考:オープンデーパンフレット:Neue Nationalgalerie, Rundgang in der Neuen.
Neue Nationalgalerie Elements

写真:©MarikoKitai

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