付加価値税減税と子供ボーナス 〜Senkung der Mehrwertsteuer und Kinderbonus〜
今月初頭に日本の消費税に当たる付加価値税引き下げを決めたドイツ。7月1日から年末までの半年間19%から16%へ減税される。
食料品など生活必需品に適用する軽減税率も同期間、7%から5%に引き下げられる。その他にも子供1人につき300ユーロ(約3万7千円)の一回限りのボーナス手当てを支給する。
これらは今年から来年にかけて実施される総額1300億ユーロ(約15兆9千億円)の経済対策内で行われる。
と、これだけ並べてみると、ポジティブな印象しか受けない。表向きには。
ところが、新聞記事を読んでいるとこんな記述に出会った。
ドイツの家族政治はとても複雑で矛盾しており、まるで50年代の家族像に沿って考えられているようだ。これはコロナ危機以前からすでにそうだった。
Familienpolitik in Deutschland ist von jeher kompliziert, widersprüchlich und orientiert sich an einem Familienbild der Fünfzigerjahre – das war schon vor der Corona-Krise so.
Berliner Zeitung: Warum der geplante Familienbonus falsch ist
この記述についてはどの辺りが50年代の家族像をモデルにしているのか知りたいところだが、今回はそれについては特に触れないでおく。
参照にした記事では一度限りの子供手当ボーナスに関する批判が見られたのだ。まとまったお金をばら撒くことは何重にも間違っている、保護者に対して上から目線でバカにしていると。
例えば、ドイツ国内には200万人の子供たちがHartz IVという生活保護を受けている。これは何もコロナ危機に始まったことではなく、すでに毎年統計が発表されており世に知られていることだ。
この家族ボーナスに一体どのくらいの予算が必要になるのか見てみると、40億ユーロくらいだろうか。さて、この予算で具体的に何ができるのか考えてみよう。保護者の負担を減らすため、より多くの子供たちを預かることができるよう、キタの保育士を増員することができるだろう。未成年者保護のための施設に投資することもできるだろう。現状、このような施設では職員が私物のコンピューターを持ち込んで仕事をしているのだから。
要するに、党の印象のために内容をよく吟味せず決められたのではないか、という批判である。
ごもっとも。我が家の場合、子供が二人いるので600ユーロが支払われるわけだが、それよりも小学校の授業が数ヶ月も短縮されている現状、もっとオンライン授業の体制を整えるとか教員の研修に当てるなど、長期的な対策を立ててもらえた方が結局は本質的な問題の解決に繋がるのだ。
コロナ危機はこうして各方面で変化に伴う対策を立てる絶好の機会でもあるので、安易な政策ではなく持続性のある対策を考えて頂きたいものだと思う。
それでもドイツ政府は頑張ってくれている印象なんですが。
参考記事:
Berliner Zeitung: Koalition einigt sich auf Senkung der Mehrwertsteuer und 300 Euro Kinderbonus
Berliner Zeitung: Warum der geplante Familienbonus falsch ist
*タイトル画像 Photo by Anne Nygård on Unsplash