魔女の集まるブロッケン山〜その2

この日は霧も晴れていたので、ヴェルニゲローデの町も見えた。現在は徒歩でも汽車でも簡単に山頂まで登って来られるようになったが、ここも以前は壁に囲まれた立ち入り禁止区域だったところだ。

かなり寒かったので、豆のスープを食べながらあれこれ話をしていたが、西ベルリンで育った相方曰く、「ハルツ地方には子供の頃、家族とよく来たけれど、この山には登っていないし西側の町からしか山頂を見た記憶がない。」と。それを聞いて、あ、こんなところにも壁の歴史があるのだな、と気付かされた。
旧東独(DDR)とソ連(UdSSR)の盗聴施設が立っていたのもここだったらしい。ここでは詳しい説明は省略するが、矢印の施設がそれに当たる。
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ベルリンの悪魔の山(Teufelsberg) には米軍の盗聴アンテナが立っていたというし、魔女の山であるブロッケンには東独とソ連の盗聴施設があったというのも興味深い。
今では年間を通じて観光客が絶えない遊歩道も、実は以前の壁跡だったというわけだ。
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1990年にはまだDDRが建設した壁と国境警備隊が配属されていた。壁は山頂の周囲を2,5kmにわたってぐるりと囲み、高さは3,6mで2274個のコンクリート材からできていた。ベルリンの壁の崩壊を受け、ブロッケン山にも自由な往来を求める群衆がデモに繰り出したんだそうだ。
1991年にはハルツ軌道鉄道も再開する。

行きは列車を引っ張っていた機関車の先頭部分が帰りは逆向きに接続されて出発する。その様子をじっくりと観察する子供たち。大きな音を立てて近づく機関車は迫力満点だ。

基本は単線だが、列車がすれ違うために伏線になる部分で対向列車を待つ。「あ、来た来た!」テンションは上がりっ放し。途中のドライ・アネン・ホーネ (Drei Annen Hohne)で汽車を降りても、また木で出来た汽車に乗っていた。「ママ、汽車ぽっぽでちょっと遊んでいい?」って、ずーっと汽車づくし。
前回は行けなかった、ドライ・アネン・ホーネにある子供向きのハイキングコースがあるというので、駅からすぐの「タンポポ」(Löwenzahn)に行ってみることにした。

動物の足跡を探したり、裸足で歩けるコースがあったりと子供が楽しみながら歩ける工夫がされていて、なかなか面白い。

森の自然がモチーフのメモリーや、動物と幅跳び競争!のような砂場まである。

Löwenzahn ZDFと看板にあったので、調べてみると子供向きの番組があるようだ。こちらもなかなか面白そうなのでチビたちと一緒に観てみようかと思う。
二度目の汽車の旅だったが、鉄道ファンも、歴史に興味のある人も、アウトドア派も楽しめるなかなか奥の深いブロッケン山だった。

魔女の集まるブロッケン山

ヴェルニゲローデ2日目。今日はハルツ狭軌鉄道に乗って、魔女の集まるブロッケンの山頂を目指すことに。このブロッケン山はゲーテのファウストにも登場するが、ヴァルプルギスの夜に魔女たちが集まり、お祭りをして春の到来を待つのだそうだ。ブロッケン山に残る雪を箒で振り払い、どんちゃん騒ぎをしたりするのだろうか。それも何だか微笑ましい。
そんなブロッケン山だが、なぜこんな言い伝えがあるのだろう。恐らく一年のうち300日は山頂が霧に覆われた神秘的な場所だということと、その霧の中で光が背後から差せば、ブロッケン現象(日本では御来光)といわれる自然現象が現れるということなどに起因するのだと思う。
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1668年 ヨハネス・プラエトリウスによる「ブロックス山の行事」 / Johannes Praetorius: Blockes-Berges Verrichtung
上の絵画のタイトルを見て、ふと子供たちが好きなビビ・ブロックスベルクという魔女の女の子のお話を思い出した。Brocksberg(ブロックスベルク)というのは、Brocken(ブロッケン山)の通称で、「ブロッケン山のビビ」に当たる。魔法が使え、箒に乗って飛び回る魔女が主人公なのだが、この山に関係があることにいままで気が付かなかった。
旅の話に戻すと、ヴェルニゲローデの始発駅から山頂のブロッケンまでは約1時間半。デッキに出て外の景色を楽しむこともできる。途中のドライ・アネン・ホーネ(Drei Annen Hohne)で給水をするために15分ほど停車する。緩やかな山なので、山頂まで線路が敷けたのだろう。

6月末に登った時は濃い霧で視界が開けていなかったが、今回は少し開けていたので山頂の遊歩道をぐるりと一周してみることにした。今回は風も強く、かなり寒い。

歩くのを嫌がって担がれる弟を尻目にすたすたと歩く姉。一見、殺風景ともいえる景色だが、走り去る汽車が見えたり、珍しい植物があったりと発見は多い。

少し行くと、「悪魔の説教壇と魔女の祭壇」に出くわす。ゲーテのファウストの一説も紹介されていた。ざっくりとした内容はこんな感じか。
「魔女たちがブロックスベルクに集まる。切り株は黄色、芽は青い。そこに野蛮な一味が集まる、ウリアン様(悪魔)もその上に座っている!」
このウリアンという男(Herr Urian)だが、17世紀以降、まぬけとか悪魔といった意味で使われ、自分が会いたくない人のことを指してウリアンさん、と呼んでいたんだそうだ。
この山、何の変哲もないが、実は色々と発見の多い山だった。
魔女の集まるブロッケン山〜その2に続きます。