Ein Tag in Nara / 奈良での1日

大阪生まれ、奈良育ち。そう、奈良には6歳から21歳くらいまで住んでいた。

だから本当は奈良がいわゆる故郷に当たる。

そんな奈良もここ数年で随分と様変わりをした。端的に言えば、海外からの観光客が増え、奈良公園や春日大社でのマナーの悪さが目につくようになった。

棒を振り回して鹿を追う子供とそれに対して何も言わない親。ぶらぶらと食べ物の入ったコンビニのビニール袋を平気でぶらさげて歩く人。ゴミを持ち帰らない非常識な人。

中高の6年間、通学路で奈良まちや奈良公園周辺を毎日行き来していた頃とはまるで違う。時代が変わったとはいえ、なんとも言えない気持ちになってしまう。

奈良公園では鹿に向かって棒を振り回す少年を叱り飛ばし、袋をぶら下げて歩く観光客に「袋をぶら下げて歩かない方がいい。」とアドバイスをしたりで正直気疲れした。

全体的にマナーが悪い。非常に残念だ。

それはさておき、メインの通り道から一歩外れると人通りもほとんどなく、飛火野や春日原生林の自然はいつも通りに美しかった。

それでも飛火野から浮御堂の方角に大きなクレーンの姿を捉え、憂鬱な気持ちになった。こんな自然豊かな土地にホテルの建設計画があるらしいのだ。

奈良は京都にはなり得ないし、ホテルを奈良公園のど真ん中に建てようとする神経がそもそも理解できない。

とまあ、こんな風に自分の育った土地だとやや感情的になってしまうものなのだ。

それはさておき、今回はこれまで行き違いになっていた元同僚に会うことになっていた。

お昼少し前に着いたので、ランチはたまたま餅飯殿商店街の人気かき氷専門店「ほうせき箱」でのバイトが入っていた友人と休憩時間に近くの京屋さんで。

季節のハモの天ぷらやナスがとても美味しかった。

猿沢池から五重塔を臨む

ランチの後は餅飯殿を抜けて猿沢池から三条通り沿いに一の鳥居まで歩く。

一の鳥居

「ママ、シカはどこ?」

息子よ、心配しなくても奈良公園に行けば鹿はそこら中にいるのだ。

子供たちと奈良に来た時はいつも春日大社原生林を歩くか飛火野で遊び、春日大社をお参りするのが恒例になっている。

春日大社本殿

今年も暑い中、春日大社の御本殿まで参拝する。子供たちにもお馴染みの場所になってきた。

「ママ、ここ覚えてる!前はあっちから来たな。」日本に帰るたびに必ず戻ってくる場所があるのとないのとでは意味合いが違ってくるように思う。

毎年お世話になっている大阪の小学校も大事な場所。奈良の春日大社も然り。

15時過ぎに友人のいるほうせき箱を目指してゆっくりと戻る。

このほうせき箱、相当な人気店らしく予約制で整理券をゲットできないとたべられないらしい。タイミングよく友人がいたので整理券をもらっておいてくれた。感謝!

マンゴヨーグルト

ほうせき箱のかき氷といえば「エスプーマ」。食材をムースのような泡状にする手法を取り入れているそうで、とにかくフワフワの氷の上にフワフワのヨーグルトが乗っている。

これはすごい!中からはマンゴーがたくさん出てくるので最後まで飽きさせない。

日本ですでに大阪の商店街のかき氷、京都は清滝のかき氷、奈良のほうせき箱と様々なかき氷を食べてきた子供たち。

「このかき氷はなんかちがう!一番おいしい!!」

と大興奮。息子はエスプーマのマンゴヨーグルト。私と娘はアッサムグレープフルーツをいただく。口の中が冷えすぎたら、白湯を飲めるように一緒に出てくるところも考え抜かれている。

社長さんからはベルリンのかき氷屋Tenzan lab.についていくつか質問が出た。どうやら、かき氷業界では海外進出を果たしたTenzan lab.は知られているらしい。

海外からのお客さんも多いそうで、特にフランス人の興味が高いようだ。進出するならパリ?「かき氷」も「寿司」や「ラーメン」に続く日本の食文化になり得るのだろう。

お土産には魚万のササガキ天と黒ごまレンコン、中谷堂のよもぎ餅と定番の柿の葉寿司で大満足。

奈良の自然も美しく、京都に比べると人出はかなり控えめでお腹はいっぱい。とても充実した1日となった。

今年の一時帰国@関西

年に一度の恒例になっている一時帰国。2018年も小学校の秋休みに10日間の休暇許可を各学校の校長からもらい計23日間の滞在となった。

日本の一時帰国についてはまだここでは綴ったことがないのだが、ふと思い立って今年の帰国を振り返ってみることにした。

大学在学中に長期休暇を利用して、英国を中心にアムステルダム、パリ、ベルリンを周ったことがある。そしてその時に一番しっくりきたベルリンに当初は1年の予定で大学卒業後にやってきたのが1995年のことだ。

ところが、海外生活の1年目など未知との遭遇続きであっという間に終わってしまい、紆余曲折の末、気付けばもう20年以上もベルリンに住んでいる。途中、病院の受付兼通訳としてモスクワでインターンをすることになり半年ほど滞在したこともあるが、それ以外は基本的にベルリンで生活をしている。「日常生活」をたまたま送っているのがベルリンだということになるのだろう。

中崎町周辺@大阪

どうしてこんなことを書いたのかというと、今回の大阪滞在中にどこかふわふわとした心もとない感じに始終付き纏われたせいだ。

モスクワ滞在中にも感じたものだったし、変な話、ベルリンに何年住んでもふとした時に立ち上がるこのふわふわとしたもの。過去にモスクワ滞在記的なブログを書いたこともあるが、タイトルに選んだ「境界線」というのも当時の帰属意識の不在のようなものから付けたものだ。ベルリナーでもなく、モスクヴィチでもないお客様でしかない自分の立ち位置から見たモスクワ滞在記として。

海遊館のジンベイザメ@大阪港

今回の大阪滞在が例年の滞在と大きく異なったわけでもないので、このふわふわとした感覚には正直戸惑ってしまった。強いて原因を探すというのであれば、今年で人生の半分以上をドイツで過ごすことになった、というくらいである。

天神橋の商店街界隈@大阪

それはそうと、今年は商店街をよくぶらぶらと歩いた。大阪滞在中にこれほど商店街を歩いたのも初めてだ。

大阪北区の夜景

長く日本を離れていると、実家の事情も年々変化する。生まれ育った奈良の実家が売られ、大阪にある所謂実家に自分のスペースがなくなる、といった具合に。日本に固定されたスペースがなくなると、自分とは余りゆかりのない土地にアパートを借りることになる。そうすると、半ば旅行者の視線で少しの間お世話になる場所をぶらぶらと探索することになるのだが、そこであのふわふわとした妙な感覚が立ち上るのかもしれない。ある意味新鮮でちょっと余所余所しいような。

春日原始林@奈良

子供達も小学校に慣れ、私も大阪での「日常生活」に慣れた頃にまたベルリンに帰る日になってしまった。

「ママ、なんか昨日来たばっかりみたいやなぁ。」

と娘は言ったが、本当にそんな気がしないでもなかった。半年くらい日本で生活がしてみたいなぁ、なんて思いながら。

タイトル写真:@六甲山