Leben im Ausland / 海外移住の盲点

90年代半ばに旅で出会った無愛想でモノクロなベルリンに惚れ込んで、特にこれといった明確な目的もなくドイツまでやって来た。

その当時はこんなに長く住むことになろうとは夢にも思わなかったし、そもそも先のことをこれっぽっちも考えていなかったからこそ、ベルリンに来れたのだと思う。

目的もなかったのに、「ベルリン」という選択肢には1ミリの迷いもなかったのが今でも不思議だ。

来た当初は、何もかもが目新しくカオスなベルリンに夢中だった。頻繁に日本に帰国するような必要性に迫られていなかったように記憶している。

どちらかというと、日本に帰るくらいなら、ベルリンからモスクワにせっせと足をはこんでいたくらいだ。

滞在が3年、5年、10年と長くなるにつれ、「日本に帰ろうかな。」(本帰国)と思わせるような出来事やタイミングが何度かあった。

単純にホームシックになった時や、精神的にどん底になった時。東京での仕事の話を頂いたような時だ。

それでも、その都度「やっぱりベルリンに残ろう。」という選択をしてきた結果、今がある。

帰るべきタイミング、という節目のようなものは存在していて、その一線を越えると帰るのが難しくなるのではないか。最近ではそう思うようになった。

理由は人それぞれだが、年齢や仕事を取り巻く状況、パートナーとの出会い、出産だったりするのだろう。

ドイツでふたりの子供をバイリンガルとして育てようと悪戦苦闘するようになってから、それまでは特に意識していなかったある問題が浮上してきた。

それは家族単位での一時帰国の難しさ、だ。

子供たちの継承語である日本語を一定レベルにキープするためには、定期的に日本語のみの環境に身を置くことがとても重要だと考えている。

そのためには、可能であれば1年に1度、最低3週間は日本へ帰国するのが望ましい。できれば日本の小学校に体験入学させるのもいいだろう。

聞こえはいいが、物理的にはなかなか厳しいのが現状である。

小学校の低学年の間はそれほど問題ではないが、学年が上がるにつれて帰国のタイミングが難しくなる。夏休みに帰るには暑すぎるし、冬休みでは短すぎる。季節の良い春や秋に帰ろうと思うと、フライト料金が高すぎる、などなかなかうまく条件に合わない。

小学校によっては、学校休暇前後に追加して休みを取ることを認めていないところもあるので、その場合はさらにハードルが高くなる。小学校を長期で欠席する際は必ず学校長の許可を得る必要があるためだ。

実は、今年の秋に一時帰国を予定していたのだが、いざフライト料金を確認してみると、軒並み1000ユーロ超え。3人分となるとざっと3000ユーロである。実家には泊まれない事情があるので、アパートを借りるとなると移動と宿泊費だけで5000ユーロ弱は掛かる計算になる。

稼いでいれば問題ないでしょ、という声も聞こえてきそうだが、小学校低学年の子供が2人いる中でフリーランスでがっつり働くとなると生活が回らなくなる。回せたとしても犠牲にするものも多いだろう。

ドイツでは小学校の教育だけでは基礎学力がつきにくいためだ。Schraibm nach Gehoä / 聴覚をもとに書く、でドイツ語教育についての疑問をまとめているのでご参考までに。

コンサルやIT業界ならともかく、現状そこまで稼げる環境にないというのが正直なところだ。

毎年、一時帰国の計画を練っていると、「このままではダメだ。」と悲観的になりがちなのをどうにかしたい。

家庭によっては、子供をひとりずつ帰国させたり、隔年で帰国したり、我が家のように日本人の親と子供のみで帰ったり、とあの手この手でやりくりしていると聞く。

そんな先のことはわからないよ、と思われるかもしれないが、海外で家族を持ち子供にバイリンガル教育をさせる、ということはそんなに簡単なことではない、ということは頭の隅に置いておいた方がいい。

海外移住のススメ、海外移住を成功させる方法、海外移住におすすめの国といったキーワードは並んでいるが、海外移住のその後については誰も教えてはくれないからだ。

親子留学についても同様なのであしからず。