Invalidenstraße / ベルリン市内の交通事情
近所に毎日のように足を運んでいるスーパーがある。
そこから目と鼻の先の交差点で先月9月6日に大きな交通事故があった。
金曜日の夕方7時ごろ。普段ならとっくに家に帰ってご飯を食べている時間だが、その日はベルリンの見本市会場で撮影の仕事が入っていた。相方が仕事帰りに車で息子をクラスメートの家に迎えに行き、帰途につこうとしていた。
Invaliden通りを走っていると、数百メートル先で一台の車が宙に浮いたのが見えたのだそうだ。
異変に気付いた相方はすぐにUターンして家に戻ったのだという。
その日、私が帰宅したのは21時を回っていただろうか。翌日、相方はそんな話をポツリとしていた。
結局、ポルシェがフルスピードで反対車線に突っ込み、歩道を歩いていた歩行者4名が犠牲になるという惨事だったことが明らかになった。犠牲者の中には3歳児もいた。
ポルシェは空き地に立っていたフェンスに激突して止まったのだそうだ。事故現場には1ヶ月経った今でも献花する人が後を絶たない。
私も長男と一緒に事故現場に向かい、花を置いて手を合わせた。もしかすると巻き込まれていたかもしれない、そんな気持ちからでもあった。
それくらい、ほぼ毎日通る人通りの多い場所で周辺には小学校がいくつかあり、通学路にもなっているような通りなのである。
ただ、普段からこの通りを自転車で走るのには若干、抵抗があった。両脇に車が駐車されていて道が狭い上に、トラムの線路が走っているためとても走りづらいのである。交通量も並行して走るTor通りよりは少ないが、それでもかなり多いほうだ。
北駅の辺りは道路工事が行われた結果、自転車道が整備されており、そこまで行けば車を気にせず走れるようになる。問題はその手前のBrunnen通りから北駅までの区間だ。
この事故が起こった後に地域住民が行動を起こすのにそれほど時間は掛からなかった。
署名を集めるポータルサイトChange.でユリアン・コップマンさんが「インヴァリーデン通りの小学生および幼稚園児のための安全な道を」というキャンペーンを9月12日に立ち上げると、1万3000人以上の署名が集まった。
事故の原因そのものは、42歳のドライバーに持病があったためとされてはいるが、今回の事故でこれまでの道路状況を見直す必要があると目が覚めたのだという。
短期・中期・長期的な対策として、コップマンさんは道路事情の改善を求めている。
9月27日には赤の市庁舎にてベルリン市長のミヒャエル・ミュラー、交通担当議員のレギーネ・ギュンター、ミッテ区長のシュテファン・フォン・ダッセルとの話し合いが実現。
これにより、Invaliden通り(Brunnen通りから北駅間)の自転車道路の確保が取り決められた。それに加え、この間の速度制限を30Kmにする方向だという。
これだけ早く市政が動くのは珍しい。学校問題も早急になんとかしてほしいところだが、人命に関わる案件となるとベルリン市も見過ごすわけにはいかないのだろう。
自転車道路の確保については今年中の実現を目指しているが、間に合わない場合は一時的な緊急対策も視野に入れている、とミッテ区長。
中期的・長期的な道路工事によって、これまで路駐されていた周辺住民の車が駐車できなくなるという問題も出てくる。
どちらにせよ、これまで自転車で通るのを避けていた道に自転車専用道路ができるのは喜ばしいことであるし、通学する子供たちの安全が確保されるのであればそれに越したことがない。
市民の声がこうしてダイレクトに届く政治にはどこか安心感がある。