Schalom Rollberg / 異文化交流プロジェクト
“Schalom Rollberg” (シャローム・ロルベルク)とはベルリンのノイケルン地区で行われている異文化交流プロジェクトである。
ノイケルン地区のロルベルク。ここはいわゆる問題の多い地区であるらしい。 無職や外国人の割合が多く、特にユダヤ人にとっては「行ってはいけないエリア」で名高いのだそうだ。
1933年以前はKarl-Marx-Straße(カールマルクス通り)とHermannstraße(ハーマン通り)で挟まれたエリアは共産主義の労働者地区だった。60年代には多くの古い見すぼらしい住居ブロックが公営住宅として利用された。
今日では30以上の国籍からなる6000人ほどの住民が住んでいる。そして、ほぼ2人にひとりがハルツVIと呼ばれる失業給付やその他の補助金を受けているのだそうだ。
近年、ヒップなエリアに生まれ変わったノイケルンのイメージからは程遠いのがこのロルベルクエリアというわけだ。
実際にこのエリアで生活しているわけではないので、上記のような記述が肌で感じられるのかどうかは疑わしいところだが、ロルベルクの評判はそれほどいいわけではないのだろう。
さて、そんなユダヤ人にとってはNo-Goエリアともいえる場所でイスラエル出身のヨナタン・ヴァイツマン(Yonatan Weizmann) は”Schalom Rollberg”というプロジェクトを運営している。
Schalom(シャローム)とはヘブライ語で「平和」を表す言葉で、日本語の「こんにちは」にも当たる。
ヨナタン・ヴァイツマンは10年前にイスラエルからベルリンに移住してきた。宗教色の強い両親のもとで育ったが、宗教そのものは彼にとってそれほど重要な位置を占めていないという。ベルリンに来て、突然自分がマイノリティーに属していることに気付き、自分がユダヤ人であることをこれまでよりも意識するようになった。
偏見や無知、接触に対する不安などが存在する中、”Schalom Rollberg”はとても重要な活動だ、とヨナタンは考えている。
このプロジェクトはMorus 14という協会組織の枠内で行われているものだが、ほとんどの家族がムスリムの背景を持つロルベルクエリアで2013年から年間約200人の子供や青少年と関わりを持っている。
20名ほどのユダヤ人が運営に携わっているが、多くはイスラエル出身、その他はベルリンのユダヤ人コミュニティーに属している。ヨナタンはユダヤ人コミュニティーの協力を望んでいるが、そこにもロルベルクエリアでの活動に不安を覚える人々が多く存在するのだそうだ。
“Schalom Rollberg”の主な活動は3つある。
・Morus通りの小学校4年生向けに「人道的な世界観」の授業を行う
・子供や青少年向けの補習授業
・ユダヤ人ボランティアによるヨガやアート、英語などのコース
プロジェクトに反感を覚える家庭もあるのだろうが、コース参加希望者が多くウェイティングリストがあるほどなのだとか。
ネットや家庭で仕込まれたのだろう、「ユダヤ人は世界征服を狙っている」「ユダヤ人が僕たちのの国を盗んだ」などというフレーズが子供たちから飛び出すこともあるのだそうだ。ヨナタンは「このテーマについて話すきっかけになるので、どちらかといえば歓迎すべきことです。」と悠然と答えた。
彼はその際にユダヤ教やイスラエル国家を代表するのではなく、あくまでもお互いに知り合うこと、出会いそのものが重要だと考えている。
子供たちの多くは、彼がイスラエル出身のユダヤ人であることはすぐに忘れ、「ヨナタン」として認識するようになるからだ。
この”Schalom Rollberg”の活動はベルリンだけではなく、ドイツ全国でも3位に入賞し、7000ユーロの補助金を得ている。
参考記事:
Berliner Zeitung: „Shalom Rollberg“ – Eine Insel der Toleranz mitten in Neukölln
Berliner Woche: Nur Kennenlernen hilft gegen Vorurteile
Schalom Rollberg