Mr. Jones / ベルリン国際映画祭
今日からベルリン映画祭がスタート。
インフル大流行りの我が家だが、ようやくプログラムをざっとチェックすることができた。
中でも気になったのは、ポーランドはワルシャワ出身、アグニェシュカ・ホラント(Agnieszka Holland)監督作品のMr. Jones。
1933年ウェールズのジャーナリスト、ガレス・ジョーンズは列車でモスクワからウクライナのハルキフ(ハリコフ)に向かっていた。彼は小さな駅で列車を降り、徒歩で旅をするうちに飢餓の事実に驚愕する。
周囲には死体が横たわり、どこへ行ってもソ連の秘密警察に出くわす。彼らはあらゆる手段を用いて、飢餓の実態が西側のメディアに載せられないよう事実を隠蔽しようとしていたのだった。
英国外務省出身のガレス・ジョーンズはモスクワ当局によるウクライナ人の大量餓死に関する事実を世界に伝えようとするが、それによって命を狙われることになる。
Mr. Jonesはソ連によって1932年から1933年にかけて人工的に行われたホロドモール(ウクライナ語:Голодомо́р/「飢饉(ホロド)」で「苦死(モール)」させること)をテーマにした作品だ。
「物語 ウクライナの歴史」第7章 ソ連の時代にはこの飢餓の特徴について3つの点が挙げられている。
第一に、これは強制的な集団化や穀物調達のために起こった人為的な飢餓であり、必然性はなかった。
第二に、ロシア本体がこの飢饉をほとんど経験しなかった。
第三に、この飢饉はソ連ではできるだけ隠されていた。
「物語 ウクライナの歴史」より
撮影地はポーランド、スコットランド、そして実際の舞台となったウクライナ。アグニェシュカ・ホラントは激しい抵抗にもかかわらず、事実を伝えようと諦めることのなかったジャーナリスト、ガレス・ジョーンズの姿をスクリーンに描き出す。
ジョーンズとの出会いがジョージ・オーウェルのディストピア寓話「動物農場」(1945年)を生んだと言われている。
アグニェシュカ・ホラント監督作品「Pokot / Spoor」は、第67回ベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞。In Darkness, Hitlerjunge Salomonそして Bittere Ernteではオスカーにノミネートもされている。
ベルリン国際映画祭には各国から数多くの作品が参加するが、こうしてプログラムを少し読むだけでも知らないことが山のように出てくる。
これだけの作品の中から、どれだけ自分の琴線に触れる作品と出会えるのかというのが毎年この時期の楽しみだ。
映画祭の期間中は会場になる映画館では、早ければ9時半から深夜を回る上映回もある。スマホやタブレットの普及でメディアのあり方そのものが変化する中、世の中から映画好きはなかなか減りそうにもない。ありがたいことである。