Systemsprenger / システムクラッシャー
今年のベルリン映画祭で時間的にタイミングが合わずに観られなかった映画が一本あった。
Systemsprenger
フォスター・ファミリー、生活共同体、特別学校。ベニーはどこへ行こうが、すぐに飛び出してしまう。嵐のような9歳児は青少年課が「システムクラッシャー」と名付けるほど。そんなベニーの願いはただひとつ。かけがえのない愛、安心できる場所、そう、ママのところに帰ること!しかし母親のビアンカは行動が予想できない自分の娘のことを恐れている。ベニーに居場所がなくなり、解決策も見えなくなった時、反暴力トレーナーのミヒャは怒りと攻撃の螺旋から彼女を自由にしようと試みる。
あらすじを載せておいたが、明るい映画では決してない。
救いがあるとすれば、ラストシーンくらいだろうか。
娘がちょうど10歳なので、9歳の主人公の女の子の境遇を思うと、どうしようもなくやりきれない気持ちにさせられる。ある意味、彼女を取り巻く状況にはまったく救いがないからだ。
完全な負のスパイラル。
期待と裏切り、失望と絶望、のようなもの。
そして9歳児の持ち得る怒りと攻撃性には度肝を抜かれる。
それでも、子供らしい一面も彼女にはまだ残っている。
そのアンバランスさが切ない映画だ。
子供を持つ親には今すぐ観てほしい映画であるし、そうでない人たちにも一度は観ておいてほしい映画である。
「母親」あるいは「父親」であることの意味を真っ向から問いかけられるような強さのある映画だ。
子供の未来を大人のエゴや暴力で潰してはならない。
Systemsprengerは第69回ベルリン国際映画祭で銀賞を受賞している。
Regie, Buch: Nora Fingscheidt
Helena Zengel (Benni)
Albrecht Schuch (Michael Heller)
Gabriela Maria Schmeide (Frau Bafané)
Lisa Hagmeister (Bianca Klaaß)
Melanie Straub (Dr. Schönemann)
Victoria Trauttmansdorff (Silvia)
Maryam Zaree (Elli Heller)
Tedros Teclebrhan (Robert)