STASI RAUS, ES IST AUS! / 「秘密警察最終日」カードゲーム

ドイツはカードゲーム大国だ。そんなドイツから一風風変わりなカードゲームが発売された。

その名もSTASI RAUS, ES IST AUS!

ここでいうSTASIとは東ドイツの秘密警察・諜報機関を総括する省庁、国家保安省(Ministerium für Staatssicherheit、略号: MfS)の通称であるシュタージ(Staatssicherheit)を指す。

全盛期には対人口比でロシアのKGBやナチス政権下のゲシュタポを凌ぐ規模で活動していたそうで、何とも物騒なカードゲームだ。

ロシアにもKGBをテーマにしたカードゲームなどがあるのだろうか?

「最高機密」カード © 2019 PLAYING HISTORY

ドイツに長く住んでいるものの、この手のカードゲームやボードゲームの類にはまだ一切手をだしてもいないし、触手を伸ばす気配も全くみえない。

ただ、この「シュタージ」のカードゲームだけは何だかとても気になる。東ドイツ出身者にとってはひどいパロディー版にはならないのだろうか?親友だと信じて疑わなかった知人が、信頼していたお隣さんが実はシュタージだった、などトラウマにしかならない経験をした人々が実際に数多く存在するだろうから。

それらの事実も引っくるめてカードゲームに落とし込んでいるのだろうか?その内容が気になって仕方がないのである。

© 2019 PLAYING HISTORY

カードゲームをしながら歴史を学ぶ、というコンセプトの元にきちんと作られた印象を受ける。1989年11月に市民運動による圧力のもと、DDR政権は事実上崩壊した。壁崩壊より前に当たる11月6日に国家保管省のエーリッヒ・ミールケによって既に書類の破棄が命じられていたのである。

シュタージのために働く、というのがゲームのルールとなっている。シュタージの視点に立てるわけだ。市民がシュタージ本部に乗り込んでくる前にいかに多くの書類を破棄できるか、というのがゲームの内容だ。

2人から5人のプレイヤーで行うことができ、特に遊び方の説明を事前に読む必要もない。カードの指示に従ってゲームを進行することができる仕組みになっている。

市民グループカードはマイナス3点

このカードゲーム、2020年1月15日に発売になったばかり。一足先に遊んでみてはいかでしょうか?発売日から遡ること、30年。1990年1月15日に市民が国家保安省に押し入るまで100人にも上るシュタージ職員の手によって多くの秘密書類が闇に葬られている。市民らの介入によって、さらなる書類の破棄は食い止められたわけだ。

Playing Historyのミヒャエル・ガイトナー(Michael Geithner)とマーティン・ティーレ=シュベッツ(Martin Thiele-Schwez)によって、このカードゲームは作成されている。

本来は学校の授業で使われることを念頭に置いて作られたそうだが、もちろん家庭用として遊ぶこともできるので是非。

カードには英語でも指示表示がされているので、歴史好きの人にはいいお土産やプレゼントになるかもしれない。

参考サイト:Playing History: Stasi rasu, es ist aus!

Kino International / ベルリンのカルト映画館

旧東ベルリンのアレキサンダー広場から真っ直ぐにのびるカールマルクス大通りには、建築のアンサンブルが並んでいる。

そのアンサンブルに溶け込んで立っているのが、ベルリン映画祭の会場のひとつになっているKino Internationalである。

Kino International / LDA-Archiv

この映画館は独特の雰囲気があり、とても好きな空間だ。映画祭のチケット入手の際も、ポツダム広場のメイン会場の側にあるショッピングセンター内のチケットカウンターより空いており例年お世話になっている。

今年のベルリン映画祭は2月20日から3月1日と少し遅めの開催だが、もちろんKino Internationalでも上映が予定されている。まだここで映画を観たことがない人がいれば、是非一度足を運んでみてほしいと思う。

この映画館、一体何が特別なのか。

それは、DDR(旧東ドイツ)の戦後モダニズム建築の記念碑とも言える建築様式にある。1963年に開館され、東独時代1990年までプレミア上映館としての役割を担っている。Defaフィルムも数多く上映されてきた。

1990年以降はベルリン映画祭の会場として、毎年数多くの映画が上映されている。

Kino Internationalの隣にあるMokka-Milch-und-Eis-Barや向かえにあるCafé Moskauの建築群が一連のアンサンブルを成しているユニークな場所。映画館の真後ろにある建物も現在はミッテ区の市役所が入っているが、以前はBerolinaというホテルだったのだそうだ。

„Mokka-Milch-und-Eis-Bar“ 1964 / Bundesarchiv
Café Moskau / Bundesarchiv

カフェ・モスクワも一時はクラブスペースだったが、現在は何に使われているのだろう。調べてみると、会議やイベントスペースとして生まれ変わっていた。正直、これでは何の面白みもない。写真左にわずかに見えているスプートニックが台無しである。とはいえ、時代の流れは変えられない。

© Cafe Moskau GmbH 2020

今現在のモスクワもこれに似たり寄ったりで、ピカピカキラキラしたモダンで味気のない街並みになっているのかもしれない。

さて、これらの建造物はヨゼフ・カイザー(Josef Kaiser)とハインツ・アウスト(Heinz Aust)によって1959年から1965年にかけてカールマルクス大通りの第二アンサンブルとして設計されたものである。

当時、映画館の最上階では青少年クラブ・インターナショナルなるものが開かれていた。ここで東ベルリン出身のバンド、Feeling B、今では有名なRammsteinの前身バンドもコンサートを行っている。

60年代の雰囲気を醸し出す内装も魅力的なので、気になる方は是非ここで映画鑑賞されることをお勧めしたい。

© YORCK-KINO GMBH

参照サイト:
Kino International
CAFE MOSKAU
ウィキペディア
Berliner Woche: Kino International bekommt zum dritten Mal Fördergelder für die Sanierung

Budapest – Perle an der Donau / ドナウの真珠ブダペスト⑵

前回の「ドナウの真珠ブダペスト⑴」ではハンガリー語やブダペスト市内交通について述べるだけに終わったが、今回は実際に街を歩いてみて感じたことなどを中心に書いていこうと思う。

Airbnbで予約したアパートのある場所から北へ行くと、カフェやブティックの並ぶErzsébetváros (7区:エリザベス市)区に入る。

対岸のブダ側にアパートをとった友人とはハンガリー産のスニーカー専門店Tisza Shoesで待ち合わせることにした。

シンプルなデザインに一目惚れ。カラフルなデザインのスニーカーを一足購入。シューズによって素材が異なるので購入の際に店員さんにサイズ感について少し相談。とても丁寧にこちらの質問に答えてくれた。ハンドメイドなので、在庫が少しずつしかないが、お気に入りの一足が見つかってよかった。

さて、次はPRINTAという工房が併設したデザインショップへ。

Printa

環境に優しい素材や製造方法にこだわって作られた服やポスターなどセンスの良い品々が並ぶ店内。友人はここで迷わずワンピースを購入。

ブダペストはグラフィックに強いのか、このようなポスター類をあちらこちらで見かけた。

Blue Bird Cafe

少し歩き疲れたので、隣接するBlue Bird Cafeで一休みすることに。店内には天井から鳥かごが釣られており、内装が素敵なカフェだった。

カプチーノとバナナマフィンで軽めのランチに。気になるお値段だが、ベルリンのミッテ地区に比べると若干安いくらいだろうか。

カプチーノが690フォリントなので、2,30ユーロくらいだ。シューズやデザインショップなどのプライス設定もワルシャワほど安くはないが、ベルリンよりは安くクオリティーが高いように感じる。

7区を散歩していると、ルービックキューブが壁面に描かれていた。そう、このルービックキューブ、実はハンガリーの建築学者でブダペスト工科大学教授だったエルノー・ルービックが1974年に考案したもの。

ポリテクニカ社の「マジック・キューブ」

ルービックは「マジック・キューブ」という名前で特許を取得、1977年にはハンガリーの「ポリテクニカ」という玩具製造会社から最初のキューブが発売されている。ルービックキューブがハンガリーと縁があったとは驚きだ。

建物の中庭に当たる通路を利用したマーケットなどもかなり充実している。市内ではクリスマスを過ぎてもまだクリスマスマーケットが開かれていて訪れる人も多く活気があった。

市内のあちらこちらにベルリンの90年代を彷彿とさせるような廃墟が見受けられた。次回はブダペストの廃墟バーなどについて触れたいと思います。

Design ah und PythagoraSwitch / デザインあ、とピタゴラスイッチ

日本に1ヶ月滞在した際に、子供たちとの日課は朝のEチャンネルだった。

7.25-7.30のデザインあ → → → ピタゴラスイッチ

を見るのがとても楽しみだったのだ。少し時間が早いので子供たちが体験入学中に毎朝見ていたことになる。

少し大げさかもしれないが、この5分間のためにNHKの視聴料を払ってもいいと感じたほどである。

それほどこの5分間という短い時間に流れて来る映像は素晴らしかった。

ミニマルな映像とその裏にある試行錯誤を重ねたストーリー。グラフィックも思わずため息が出るほどのクオリティーである。

デザインあの「かたち」シリーズ「デザインの観察」には子供たちも画面に釘付けだった。

やかん、消化器、トランペット、天狗のお面などを絶妙なライティングで少しずつ見せていく。

Creator: 細金卓矢

「あ、これ知ってる!」「えーっと、なんて言うんやったっけ?」

Creator: 細金卓矢

見ているうちに徐々に全体像が浮かび上がってくるわけだ。

ピタゴラスイッチについてはもはや説明はいらないだろう。

こんなに素敵な映像を子供の頃から毎日目にしていれば何かしらの影響があるのではないかな。

そんなわけで、すっかりこの番組に影響された私は日本滞在中にデザインに関する書籍を持ち帰りたくなってしまった。

ピタゴラスイッチを手がけている佐藤雅彦の「プチ哲学」と「新しい分かり方」

どの書店でも目を引いた筒井美希の「なるほどデザイン」

の計3冊。プチ哲学は31のテーマに分けられ、それぞれにイラストが添えられたとても読みやすい本だ。巻末に添えられたエッセイも面白い。

佐藤雅彦氏が日常で出会った小さな事件や発見を日記として綴ったものだ。

何気ない日常から新たな発見をする、という作業は地道だが楽しい。毎日ブログ更新を続けていた際には道を歩きながら自分のアンテナが鋭くなっていくのが面白かった。

いつもの風景が少し違って見えるような気さえしたものだ。

仕事や旅行などでハードルが上がってしまった毎日更新。できる範囲で続けられればな、と改めて。

タイトル写真:©NHKデザインあ