Поспорт, пожалуйста! / モスクワでの失敗談(1)

どうして今頃になってモスクワ話をするのかといえば、ブログマラソンも30日をどうにか達成し、ネタが尽きてきたのと、明日からのロケハンで心情的に余裕がない、というのがそもそもの理由である。

インターネットもSNSもまだ今のように浸透していなかった頃の話だ。

だから、失敗してもその事実がほぼほぼオンタイムでSNS上に投稿されることもなければ、その投稿を読んだ人からリプをもらうこともなかった。

ある意味、何をしようが誰かに批判されることもなければ、いいねと賛同されることもない。

なので、本来の意味での「自由な生活」を送りたければSNSを使わない、あるいは事あるごとに投稿しない、というのが一番かもしれない。
ただそれだけのことだ。

当時はフィルムカメラのニコンを連れて、モスクワ市内をブラブラしていたのであるが、モスクワの友人にどこか面白いところはないか、と尋ねたところ「線路沿いに車のガレージがずーっと並んでいるところがあるから行ってみたら?」と言われた。

線路にガレージか、と思いつつ具体的な場所は残念ながら覚えていないのだが、カメラ片手にメトロに乗って教えてもらった場所に向かってみた。

人通りも少なく、かなり辺鄙な場所である。

「大丈夫なのか、ここ?」と思いながら、どう見ても観光客としては違和感満載な空気を発しながら周囲をウロウロしていた。

写真を撮っていると、意識がファインダーの向こうに飛んでいることが多いので、背後から突然声を掛けられたときは心底びっくりした。

「ここで、何やっているんだ!?」

振り向くと3人の警官が真後ろに立っていた。

「(あちゃー、これはアカン)写真撮ってるだけです。アーティストなので。」なんとなく説得力があるような気がしたので、にわかアーティストになってごまかすことに。

「パスポートは?」*モスクワでは常に身分証明書の携帯が義務付けられていた。

「どうぞ。」

知人のギャラリーから招待状を手配してもらい、入国ビザをちきんととっているので何も問題はないはずである。しかし、ここはモスクワ。
そのままなんだかんだと言いがかりを付けられ、貴重品(財布、パスポート、カメラ)を没収された挙げ句、車に乗れ、と。

「!?$%&★」(軽くパニック)

とにかく連行されるようなことはしていないので、最悪カメラだけでも何とか取り返せないかとあれこれ考えを巡らせる。

「展示用の写真を撮っていただけなんだから、(変なことしたら)日本大使館に連絡しますよ。」

スマホのない時代だ。説得力がない。ここで助かったのは3人の警官が話している会話の内容が分かったことだろう。このシチュエーションでロシア語が分からなければ恐怖でしかない。

よくよく聞いてみると、どうやらこの警官たち、暇を持て余しているらしい。

「なんでモスクワにいるんだ?」
「付き合っている人はいるのか?」
「あんなところで一体何をしていたんだ?」

仕方がないので、諦めて彼らの質問に丁寧に答えてやることにした。

かなり打ち解けたあたりで、警察署に到着。貴重品類は取り上げられたまま。
そこでなぜか突然、堰を切ったように怒りが爆発した。

「ちょっと上司を呼んでくれますか?シェフはどこだ!!

気づいたらなぜか大声で、しかもドイツ語で叫んでいた。

なんだ、なんだと現れた上司らきし人物。彼に再度、状況を説明すると、あっさり貴重品一式を返してくれたのである。

外に出ると、さっきの三人組とは別の警察官に声を掛けられた。

「で、全部返してもらえたの?」

「返してもらえましたよ。」

「え、ほんと!?それはすごいね。駅まで送ろうか?」

(もうええわ)

この日、這々の体で戻って大変な目にあった、と報告をしたのであるが、ちーっとも心配されなかったばかりか、「ハハハ、何も取られなくてよかったね。」で済まされてしまった。

警官とのストレスが日常茶飯事のモスクワ。2001年に半年ほどインターンをしながら生活していた頃も、頻繁に警官に止められては、パスポートの提示を求められたのは言うまでもない。

今のモスクワはそんなことまるでなさそうなんだが、実際どうなんだろう?




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