Round not Square / ベルリン発の巻物書籍

あなたはペーパー派?それともデジタル派?

と聞かれれば、間違いなく「ペーパー派」と答える。

本を読む、という行為にパラパラとページをめくる、というアナログな動きを求めるタイプなのだ。

それに、収納スペースは取られてしまうが、静かに並んでいる本を見ているとそれだけでも心が落ち着く。

タイトルを眺めているだけでアイデアが浮かんでくる気さえする。

ベルリンで生活するようになってから、最近ではドイツの何やら良からぬ郵便事情によって仕方なくKindleも併用するようになった。

一時帰国の際には子供たちの本を優先的にまとめ買いして帰るようになった、というのもその理由だ。

そこで、小説は紙、主にビジネス書やらマンガなどをサクッと斜め読みするのはKindle、というように使い分けをしている。

それはそうと、先日、書店のレジ付近で見慣れない形状の本を見つけた。レジのお姉さん曰く、「坂の上に出版社があって、自転車で配達してくれたのよ。」ローカルなゆるい感じがこれまたいい。

それがこちら↓

筒状に巻かれた本。もはや巻物にしか見えない。

なるほど、デジタル化に対抗するために巻物ときたか。世の中、アイデア勝負。Round not Squareという出版社のネーミングにもセンスを感じる。

この小さなスタートアップ、Round not Square。フランス人のIOANがデザインやアイデア、数字を担当。ドイツ人のANTONIAは主にコミュニケーションやコンテンツの担当なのだそう。全てこのふたりの手によって作られている、というのも好感が持てる。

ファウストの表紙に使われているリネン

本の背表紙などに使われる少しハードな素材のBook Linenに印刷されており、巻きグセをつけてあるので慣れるまでは扱いにくいだろう。クルクルっと巻き取れるようにマグネットも仕込まれている。

気の利いたプレゼントになること間違いなし。

友人にもらったお気に入りの縦長フォーマットの塗り絵があるのだが、同じものが巻物バージョンでもあるようだ。

Sarah YoonsのTo The Moon。「世界一長い!」塗り絵なんだそうだ。こちらはパタパタと折りたたまれている現行バージョン↓

数年前から癒し効果がある、とかでこうした成人用の塗り絵シリーズというのも色々とバリエーション豊かに出版されていてなかなか楽しい。

この塗り絵のことも長らく忘れていたので、少し続きを塗ってみようかと思う。愛用の色鉛筆はかなり前に見つけて一目惚れした色辞典シリーズだ。

どうも昔からグラデーョンに弱いのである。価格がかなり下がっていて驚いた。今、2集と3集が家にあるが、こちらのシリーズは3集まで出ているので全部欲しい。

細かなイラストに自分の好きな色を試行錯誤しながら置いていく地道な作業には、確かにリラックス効果がありそうだ。

さて、巻物の話に戻そう。

新しい解釈の赤ずきんちゃんと銘打った作品「ヴィルマとオオカミ」。
絵本も横にスクロールしていくのが楽しい作品になっている。

Illustration by Luisa Stenzel

どちらかと言うと、この巻物シリーズ。読み物というよりも「巻物をスクロールするワクワク感」や「斬新なデザイン」に繋がっている印象だ。巻物用にストーリーを組み立てる楽しさもあるだろう。色々と遊べるフォーマットだ。

スピード感や他人からの受けばかりを求めがちなツイートやブログなんかもそのうち世間から飽きられ、メモや手紙、手書きの原稿用紙の価値が高まる時代がふたたび来るかもしれない。

そこまで逆行するのはさすがに無理だろうか。

ファストファッションやSNSの消費ばかりでは疲れてしまう。

ポスト「ファストファッション」、ポスト「SNS」に期待することにしよう。

Round not Square: https://round-not-square.com/en/


Kaufhalle in der DDR / 東独時代のスーパー

ある夏日の日曜日。Japan Street Food祭りらしきものが文化醸造所(Kulturbrauerei)と呼ばれる元ビール醸造所を改装して作られたカルチャーセンターの敷地内で行われるというので、子供たちを連れて足を運んでみた。
お好み焼きや唐揚げ、たい焼き、プロペラ(じゃがいもを薄くスライスして揚げたもの)などを堪能した後、近くの公園に行ったが天候が崩れたこともあり、入場料無料のカルチャーセンター内にある博物館へ戻ることにした。
文化醸造所博物館(Museum in der Kulturbrauerei)はドイツ連邦共和国歴史博物館財団(die Stiftung Haus der Geschichte der Bundesrepublik Deutschland)によって、Alltag in der DDR「DDRの日常」というテーマの博物館として2013年11月にオープンした。
展示内容は東独時代の日常生活と社会主義統一党(SED)政権下におけるイデオロギー、管理メカニズム、圧迫感などの緊張関係にスポットが当てられている。
展示は数多くのドキュメント、映像、音声資料などによって構成されており、DDR時代のキオスクやバー、休暇の家なども再現されている。これら日常シーンの再現とともに、SED政権によるプロパガンダが人々の生活のあらゆる場面に侵入していたことを感じ取れるような工夫がなされていた。
どこか素朴な東欧のテイストが好きなのであるが、東独もまた然り。特に気になったロゴがタイトル写真の3人組のネオン看板だった。一緒にいたDDR出身の友人が「今のようにREWEやEDEKAというチェーンなどはなく、スーパーマーケットといえばKaufhalleだった。あのロゴはKaufhalleのものだよ。」と教えてくれた。
気になったので調べてみると、なかなか興味深い記事が出てきた。


Die gute alte Kaufhalle: https://www.mdr.de/zeitreise/kaufhalle-100.html
Am 26. September 1957 öffnete in Köln der erste Supermarkt. Er war nach amerikanischem Vorbild konzipiert und besaß eine Verkaufsfläche von 2.000 Quadratmetern. In der DDR wurde erst 10 Jahre später ein erster Supermarkt eröffnet – die “Kaufhalle”.
1957年9月26日にケルンで最初のスーパーマーケットがオープンした。スーパーはアメリカを手本にしたもので、売り場面積は2000m2だった。DDRではその10年後に最初のスーパーマーケットである”Kaufhalle”がオープンしている。


波上の屋根を持つホールの正面に素敵なKaufhalleのロゴと共にあの3人組が。左側にHOとあるので何かと思ったら、Handelsorganisation (HO)、商業組合の略だった。

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Kaufhalle in Greifswald Bildrechte: dpa

Kaufhalleでは所謂、”WtB” – “Waren des täglichen Bedarfs”パンやバター、果物、牛乳、ドラッグストア商品などの「日用品」が購入できたので、現在のスーパーマーケットやディスカウントショップなどに当たる。
ところがこのスーパー、SED党首ホーネッカーや副首相ミッタークらの休暇の家に近いという理由だけで、ほぼいつもベルリンのビールや新鮮な果物に野菜、その上南国フルーツであるアプリコット、バナナ、レモンといった他ではコネがないと手に入らない類の商品が並んでいたり、SED本部のあったベルリンは地方と比べると格段に品揃えが良かったり、というようなことがあったのだそうだ。
今でも、旧東独エリアではスーパーマーケットのことを俗語でKaufhalleと言ったりもするらしい。
たかがスーパー、されどスーパーである。


この博物館、思った以上に面白かったので是非足を運んでみて下さい。
博物館のサイトでDDR時代の展示品アーカイブがあったので、興味のある方は以下のリンクをご参考までに。ポスターや玩具、食器なども多数あるので見応えがあります。
http://sint.hdg.de:8080/SINT5/SINT/query?term=SIG

Holzmarkt / ベルリン最後のユートピア?

もう、かれこれ2年くらい前だろうか。Holzmarkt通り沿いのRadial Systemで知人のダンス公演があったので、JannowitzbrückeからOstbahnhofに向かって歩いていた。

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すると道沿いに木の掘っ建て小屋やベンチなどが雑多に置かれたスペースがあって、「まだこんな場所があるんだ。」などと思いながらぐるっと一周して、また改めて見に来ようと思いながら、そのまま長い間そんなことすら忘れていた。

そして、昨年の秋。仕事で高城剛さんの取材に同行した際に、「ホルツマルクトってご存知ですか?面白いから行ったほうがいいですよ。」という話しになり、その時はまさか高城さんの言う「面白い場所」、というのが2年前に足を踏み入れたやたらと木でできた手作り感満載だったあの場所のことだとは思いもしなかったのである。

それからまた時間が経ち、昨年の冬にようやく再訪したホルツマルクト(Holzmarkt)。まだ午後の早い時間だったせいもあり、人もまばらで店も開いておらず、唯一開いていたカフェで暖をとることにした。

・・・のだが、ここでも残念ながらまたいつもの違和感を肌で感じたのである。この違和感のせいで、実はブログに書くのも嫌になってしまっていた。

どうしてか。店内には英語のみが飛び交い、カウンター越しの男性の対応もどこかつっけんどんで話にならなかったのである。

本当に残念なことに、この「鼻持ちならない感じ」はベルリンに来たばかりの当初、90年代半ばには微塵もなかった空気なのだ。

元来、資本主義に対抗するはずのヒッピー文化がここにきてビオブームやエコビジネスなどの流れで商業化した結果、とでも言えばいいのだろうか。ヒップスター?つまらない。

残念ながら、正直全く好きになれなかった。そして、またホルツマルクトからは足が遠のいていた。表面的には昔のベルリンを彷彿とさせる手作り感はあるので、撮った写真を何枚かここに載せておこう。

前置きばかりが長くなってしまったが、タイトルにあるようにどうやらホルツマルクトの存続が危うくなっているのだとか。

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©EckwerkのHPより

その主な原因は2014年からホルツマルクト共同組合(Holzmarkt Genossenschaft)の掲げるリビングスペース及びワーキングスペースを融合したフューチャーハウスとも呼べるEckwerkのコンセプトが頓挫したことによる。

2017年5月1日にホルツマルクト村は華々しくオープンしたのだが、Eckwerkはその時既に困難に陥っていたようなのだ。

  • ホルツマルクト協同組合(Holzmarkt Genossenschaft / Eckwerk Entwicklungs GmbH)
  • スイス年金基金(Stiftung Abendrot)
  • Gewobag
  • クロイツベルク・フリードリヒスハイン地区市議(Bezirksstadtrat für Bauen)

とにかく、何が問題になっているのかというと、Eckwerkの共同プロジェクト構想(Gewobagが噛んでいる)へのゴーが意見対立や法律的な問題でなかなか出ないことに尽きる。それに業を煮やした年金基金がEckwerk建築予定地の借地契約を解消しようとしていること、ホルツマルクト組合が長引く裁判のため経済的に圧迫され、自己破産寸前だということなどらしい。

ベルリン市の打ち出したメディアシュプレー構想に真っ向から対決し、75年の借用権利を勝ち取ったわけだが、ここ数年のベルリンの土地の異常な値上がりやそのロケーションから資金難に陥り、海外からも注目されたユートピア構想が頓挫するという、まさに今現在のベルリンの現実を目の当たりにさせられる。

とはいえ、Eckwerkにスタートアップ企業を誘致し、アーティストとのコラボから云々という文脈からはもはやジェントリフィケーションの匂いしかしない。

しかし、1年も経たないうちにここまで注目されたプロジェクトがあっさりと頓挫してしまうベルリン。それも何だか悲しい現実でしかない。一等地にユートピアを生み出す構想はこのまま終わってしまうのだろうか。その行く末に注目したい。

参照記事:
https://www2.holzmarkt.com/
https://www.rbb24.de/panorama/beitrag/2018/05/holzmarkt-berlin-finanzen-schwierigkeiten-eckwerk.html
https://www.morgenpost.de/berlin/article212700287/Holzmarkt-in-Friedrichshain-Aerger-ums-Modellprojekt.html

余談になるが、夏日が続くベルリン。偏見を捨てて、夏のホルツマルクトも体験しておいた方が良さそうだ。

Pinguin Eisdiele / 「ペンギンアイス」という名のアイスクリーム屋さん

イースター休暇の小旅行で発見したお店。
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ペンギンのロゴが素敵なこちらのアイスクリーム屋さん。Burg Stargardという小さな街中にある創業60年以上のソフトアイスクリーム屋さんだ。内装といい、アイスを乗せるコーンといい、東ドイツ時代を彷彿とさせるノスタルジックなお店である。
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写真の左手の女性、シモーネ・アーレントさんはここで既に30年以上も働いているそうだが、彼女の叔父と叔母からお店を譲り受けたらしい。

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東ドイツでの30周年記念@privat

2014年に創立60周年を迎えたBurg Stargardのペンギンアイス。ホースとさんとギゼラ・フスさんによって開業され、それが姪のシモーネさんに引き継がれ現在に至っている。ホーストさんが当時、改良に改良を重ねたソフトアイス・マシーンが今も現役で活躍しているのだそうだ。
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チョコとバニラ味のソフトアイスも1ユーロで美味しかった〜。イチゴ・バニラアイスも食べてみたいな。
近くまで来られることがあれば是非、足を運んでみて下さいね。
Pinguin Eisdiele
Eisproduktion Huth
Marktstraße 19
17094 Burg Stargard
Telefon: 039603 20309

こういう嬉しい出会いがあるので、旧東ドイツエリアでの散策はわくわくする。

参考記事:http://www.nordkurier.de/neubrandenburg/den-jubilaeumsbecher-gibt-es-nur-morgen-086818705.html

nextbike and Co. / シェアリングバイク競合

相変わらず春がやって来ないベルリン。曇天の中、ハーケッシャーマルクト方面へ散歩がてら出掛けて来た。
道中に自転車が一般の自転車に混じってゴロゴロと駐輪してあるのに出くわす。本場ドイツのLIDL / DBnextbikeがお馴染みだが、最近また新たに参入してきたシェアリングバイクらしきものもちらほらと見かける。

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DBのCall a Bikeと提携しているLIDL-BIKE

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サイクルポートを持つnextbike

ネットで調べてもベルリンのシェアバイクを網羅したサイトがヒットしなかったので、近くを実際に歩いてみて新たに参入していると思われるバイクを写真に撮ってみた。
例えばこちら。Donkey Republicはコペンハーゲン発のシェアバイク。ベルリン参入は2017年の春らしいが、これまで余り見かけなかったように思う。

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コペンハーゲン発のDnkey Republic

カラーもオレンジでよく似ているものとしてはこちら。シンガポール発のoBikeだ。このoBikeはミュンヘンではいきなり7000台と急な参入を図ったことで、ちょっとした問題になっているようだ。サイクルポートを持たないため、乗り捨てられた自転車が街の景観を損ない、それを住民が快く思わないためか自転車が故意に壊されたり池などに放り込まれたりしているのだとか。ベルリンには2017年11月に688台からスタート。
参入する国や街に配慮したプロモーション方法をもう少し丁寧に考えるべきなんだろう。住民が一度悪いイメージを持ってしまうと、生活の一部としてシェアバイクを使用するユーザーを増やすことはかなり難しくなるはずだ。

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シンガポール発のoBike

そう言えば、こんな自転車も近くの公園の池で見かけた。2017年11月からベルリンでのシェアを開始した中国発のMobikeらしい。
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これら3つの新参バイク。カラースキームもオレンジ系で類似しており、正直あまり区別が付かない。北京発のMobikeは氷の張った池の上にわざわざ駐輪されていたが、これは明らかに嫌がらせか何かだろう。Mobikeは2017年11月にベルリンにひとまず700台で参入している。
これらのシェアバイクシステム、ベルリン市内を走るのであれば自分の自転車がすでにあるので余り使用する機会もなさそうだが、もし仮にどれかを選ぶとするならライプチヒ発のnextbikeかな、と思っている。nextbikeはベルリン市から補助金も出ている。ドイツ国内で50箇所、世界25カ国で展開中。
特徴としては、日本にも2017年12月に上陸した音楽ストリーミングサービス「Deezer HiFi」(ディーザー ハイファイ)と提携しており、Deezerの月額9,90EURのプレミアムplusアカウントを持っていればnextbikeの使用が毎回30分までなら無料になるという魅力的なサービスだ。
Deezerは、2007年にフランス パリで創立され、すでに世界80ヶ国以上と最も多くの国で展開されている音楽ストリーミングサービスで、”高品質”が売り4.1kHz/16bitなどのCD音質をそのままストリーミング配信しているのでロスレスで楽しむことができるのだそう。

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ベルリン発のBYKE Mobility

ベルリン発のスタートアップ、BYKE Mobilityのことを忘れていたが、このバイクはスカイブルーとイエローで他のバイクとは違い遠くからでもすぐに分かるカラースキームが採用されている。料金も30分50セントと他社の半額である。
ところで、シェアリングバイクのシステムをいち早く導入した欧州内の街は2007年のパリなんだそうだ。狭くて自転車に乗りやすいイメージがないので意外だった。
シェアリングバイク各社とも無料キャンペーンなどで、実際に試乗できる機会を設ければベルリン市民のユーザーも増えるのではないか、と思うのだがいかがだろう。それぐらい思い切ったキャンペーンでも打ち出さない限り、なかなか競合に勝てないような気がする。
追記になるが、今日(2018/4/12)に近所の公園の側に駐輪されている二台の新参バイクらしきものを発見。アメリカ、シリコンバレー発のLimeBikeらしい。HPでは欧州のステーションがフランクフルトとチューリッヒの二箇所のみに限られているので、もしかするとベルリンでテスト期間でも行っている最中なのかもしれない。カラースキームは春らしいライムとイエローでよく目立つ。
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こんな風に各国からシェアリングバイクがどんどん入って来ることにより、街の景観が崩れないのか、歩道脇に所狭しと駐輪されるバイクが歩行の妨げにならないのかどうか気になるところだ。ベルリン市内では既におよそ1万台ほどのシェアバイクが利用できるということだが、北京発のofoもMobikeも新たに1万台で市場参入を希望しているそうなので、ベルリンが乗り捨てられた自転車だらけになる日もそう遠くはなさそうだ。
環境に優しいのはいいが、果たして長期的に見てうまく機能するのだろうか?
参考記事:Leihräder US-Start-Up drängt mit E-Bikes in Berliner Markt – Quelle: https://www.berliner-zeitung.de/29780808 ©2018
またまた追記(2018/06/01)になるが、シェアリングバイクの台数が増えるに伴い、日々乗り捨てられるシェアバイクが目に余るようになってきた。写真はたまたまofoのバイクだが、基本的にサイクルポートを持たないシェアバイクはミッテのあちらこちらで道を塞いでいる。子供もシェアバイクを目にするたびに「ママ、またあの自転車やで!あそこにも、あそこにも。」と言い出す始末。

この状態を放置していると酷いことになるな、という懸念があったが、とうとうミッテ地区の区長シュテファン・フォン・デッセル(緑の党所属)が対策に乗り出した。「我々はシェアバイク1台ごとに特別使用料を課したいのです。」将来的にはバイク1台ごとに3ユーロから10ユーロの範囲で料金を課す意向だ。
ただし、サイクルポートを持つNextbikeなどはこれに当たらず、逆に有利に働く仕組みになっている。ポズナンでも実際に使ってみて感じたことだが、やはりサイクルポートを持つシェアバイクの方が街の景観や利用者の秩序を保つ、という意味では非常にスムーズなシステムであると感じた。
ベルリン市内でも特にシェアバイクの多く集結するミッテ地区が料金を課す決定を下したことは、ベルリンの他の地区にとっても非常に重要なシグナルとなる。フリードリヒスハイン・クロイツベルク地区では自転車道をブロックしているシェアバイクを治安局(Ordnungsamt)に撤去させたばかりだった。
ベルリンのシェアバイク競合、今後どのような展開を見せるだろうか。

Benji Knewman / ラトビアの雑誌

去年の10月半ば。いつもは前を通りすぎるだけの雑誌ストアのショーウインドウにこんな張り紙が。
5キロで5ユーロ
そんな時に限って大荷物だったのだが、とにかく店内にそのまますーっと吸い込まれてしまう。在庫処分セールとはいえ、5キロで5ユーロって!?
そう言えば、雑誌や図録なども場所を取るのと、値段もそこそこするので最近はほとんど購入していなかった。店内がかなり混雑していたので、とにかく目についたものをささーっと選んで(荷物も多いことだし)秤にかけてもらう。
こちらが戦利品↓
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中でもラッキーだったのが、ラトビア発の雑誌Benji Knewman(16,95 €)との出会い。
英語とラトビア語のバイリンガル表記になっており、Life that you can readというコンセプトが素晴らしい。読み応え十分だし、挿絵のイラスト、写真なども自分のテイストにぴったりくる雑誌だった。これは単純に嬉しい。やはり書店だとこういう発見があるので、本屋の存在というのは常々大切だと思っている。

ところで、なぜ今頃になってこの記事を書くことにしたかというと、今朝たまたま週末に読んでとても印象に残ったページをインスタに上げたところ、チーフ編集者のAgnese Kleinaさん(@agnesiga)から反応があったからだ。「あなたが私たちの雑誌の読者で嬉しいわ😘」的なコメントまで頂き、よかったらBenji Knewman Vol.7が5月に出るからよろしくー。フォローもよろしく!というメッセージでしたので、もちろん@benjiknewmanをフォローしVol.7も定価でもいいから購入しようかと思ったほど。
このインスタの投稿、途中で写真が切れてしまっていて先方には申し訳ないことをした。実は修正しようと思っていたら、既にメッセージが入ってしまいそのままになってしまっている。
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こんな風にSNSですぐに編集者と繋がれたり、出版社もプロモーションができる時代ってつくづく便利だし面白いなぁ、と思う。5年後、10年後がどんなことになるのか予想が付かないが雑誌も書籍もそして書店もなくならないで欲しい。
ところで、この在庫セール、数時間後にまた同じ店の前を通ると1キロ5ユーロになっていた。そりゃそうだ。やっぱりいくらなんでも安すぎたんだろうな。
というわけで、また在庫セールを狙って皆さんも一度Sodabooksを覗いてみてください。

Jeans Team / 90年代のベルリン⑧

Galerie berlintokyoでは、展覧会やセッション、パフォーマンスやハプニングと毎回何かしらイベントが行われていたのだが、中でもJeans Teamは耳に残るサウンドやほわんとしたビジュアルでとても印象に残っている。

Jeans Teamが1996年にリリースしたビデオアルバム(!)はVHSテープに収録され、手縫いのジーンズケース仕様になっている。我が家にはVHSビデオがまだ見ることができる環境なので、これはかなり魅力的なフォーマットだ。

このビデオは2017年にベルリンのNadel Eins Studioにて再度マスタリングされている。

Jeans Teamは1995年にReimo HerfortとFranz Schütteによって結成されたバンド。当時はアルバムのリリースなどは全く考えていなかったそうだ。

そんな彼らのファーストVHSアルバムはGalerie berlintokyoで展示販売された。

“Henning”は、自宅で録画録音しました的なゆるーい感じがとても好きな曲。この音を聴くと当時を思い出す。

そんな彼ら、今でも活動を続けているようでベルリンのヴェディング地区にあるゲズンドブルネンセンターをテーマにした曲も面白い。とにかくベルリンテイストがぎっしり詰まったローカルバンドである。

An der Kasse bei real,- …GESUNDBRUNNEN CENTER! Alle narven sie totall… GESUNDBRUNNEN CENTER!

彼らの楽曲はドイツ語のリスニング強化にもいいかもしれない。覚えやすいメロディーにスラング。生きたドイツ語が盛りだくさん。オススメです!

タイトル写真by Sim Gil、その他の素材©Jeans Team

Gelerie berlintokyo / 90年代のベルリン⑦

去年だっただろうか、娘をピアノ教室に迎えに行った際、同じく子供を迎えに来たのであろう見知らぬ父親に声を掛けられた。「あれ?どこかで会ったことない?」

記憶を掘り起こすのに数秒かかったが、その人物こそ、当時まだ開発が進んでいなかったHackescher Höfeから目と鼻の先に”Galerie berlintokyo”を立ち上げたラファエル・ホルゾン(Rafael Horzon)だった。1996年のことだ。

ベルリンのミッテ地区がまだ開発の波に飲まれる前のRosenthaler Straße。以前は「小さな地下の体育館」だった場所に、アートギャラリーでもなく、日本とは直接何の繋がりもない”Galerie berlintokyo”をイニシエーター、経営者としてスタートさせた人物である。

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ギャラリーでの初展示では実在しない日本人アーティスト、Masahiro Sugimotoの作品として自分の使っていたトースターを展示販売したんだそうだ。CaptainHoney Suckle Companyもこのスペースでパフォーマンスや展示をしていた。

ラファエルの企てはキャッチーなネーミングと90年代のベルリンの持つツァイトガイストに見事にハマり、Vogueが„Der modernste Keller Europas“「欧州で一番モダンな地下室」と紹介し、カッセルで5年に一度開かれる大型現代美術展Documenta X からも声まで掛かる羽目に。

「このギャラリーが単なる『ギャラリー』のひとつになってしまうなんて、何か違う方向に進んでいるとショックを受けたのです。」とラファエルは自伝“Das weiße Buch”の中で述べているそうだが、彼はこの件をきっかけにGalerie berlintokyoからさっさと手を引いたのである。

当時から引き際が潔いというか、時代の波に乗るのが上手い人だというイメージがあった。かなり前からTor Str.にMobel Horzonという不思議なスペースがあるのだが、どうやらこれも彼の多くの企てのひとつのようだ。

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LOGO / MOEBEL HORZON

まさかあのガラーンとしたスペースに白い本棚が立っているだけの場所が、ラファエルと関係があったとは。。前を通るたびに感じていた違和感の正体はこれだったのか。相変わらず恐るべしコンセプトの持ち主である。

東ドイツのテイストを彷彿とさせる微妙なデザインと配色のロゴに店構え。もはや展示ルームですらない不思議な空間に、やけに洗礼された真っ白な本棚だけが無造作に置いてある。スタッフの姿を見ることもほとんどないが、なぜか主張が強い。

どこまでが冗談でどこまでがビジネスなのか本当につかみどころがないのだが、この人、会社をいくつも設立している。今でもやはり、ミッテの変化に軽やかに便乗しているというわけだ。

言葉のセンスもピカイチだし、ピアノ教室で再会したのも何かの縁なのでそのうち時間を作って頂いて色々とじっくり聞いてみたいものだ。

参考サイトその他:
タイトル写真はgalerie berlintokyo spielkreis 02 ’98から引用しています。

Le Van Bo – Herz IV Möbel / バン・ボー・ルの「ハルツ4家具」

先日、仕事でリサーチをしている際に偶然、面白いアイデアに出会った。
ラオス系ドイツ人、バン・ボー・ル=メンツェル(Van Bo Le-Mentzel )の編み出した「ハルツ4家具」のコンセプト。「ハルツ4」とはドイツの失業手当も含めた社会保障制度を指す。
バン・ボー・ルは1977年にラオスで生まれたが、両親は彼が2歳、ラオスが共産主義化した時にドイツに移住している。彼はベルリンのヴェディング地区で育ち、 „Prime Lee“というハンドルネームでラッパーやグラッフィティ・アーティストとしても活動している。

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24 Euro Chair / HERZ IV MOEBELサイトより

建築を学んだ後、一時的に社会福祉のお世話にもなったこともある。市民大学で家具作りのコースを受講した際に「ハルツ4家具」を思いついたという。このコレクションには24ユーロチェアベルリンホッカーノイケルン・デスクなどのラインナップがある。

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Berliner Hocker  (Foto: Daniela Kleint)

バン・ボー・ルはシンプルな設計図を引き、Bauhausからインスピレーションを受けたというデザイン性のある家具を提供する。自分で作ってみようと試みる全ての人に。高価なデザイン家具には手の出せない人でも、品質とエレガントさを低予算で自宅に備え付けられるというコンセプトだ。興味のある人は組み立て設計図をフリーダウンロードできるが、一つだけ交換条件がある。
それは自分のストーリー、すなわち人生やモチベーション、そして完成した家具について語ること。物語を語ることが条件というのも粋である。
バン・ボー・ルは持続性や社会的公平性などに関心があり、 „Konstruieren statt Konsumieren“ 「購買する代わりに構築する」をモットーとしている。その他の活動としてDeutschPlus協会主催の „school talks“などにも参加。スタート地点から既に困難な状況にある若者たちにモチベーションと希望、インスピレーションを与えるのがその役目だ。
とにかくプロフィールが建築家、作家、映画製作etc.とにかく活動範囲が広い人物である。できれば一度、彼のワークショップで家具作りに挑戦してみたいものだ。自分の手で実際に物を作るというのは、「できた!」という達成感が得られやすく一種のセラピー効果があるのかもしれない。小さな成功体験というやつである。
著書:

参考記事:

  • http://www.hartzivmoebel.de/
  • http://www.taz.de/!5141559/

動画も見つけたのでご参考までに。

タイトル写真:©Van Bo Le-Mentzel/ Hatje Cantz