一枚の写真から②
上の写真がどこかお分かりだろうか
この写真はベルリンの中心地であるポツダム広場がまだ空き地だった頃のものである。
93年に初めてヨーロッパをひとりで旅行した時にベルリンにも立ち寄ったのだが、その時は広場のあちらこちらにまだ壁の残骸が打ち捨てられている状態だった。
この写真はその当時のものではなく、それから数年経った状態のポツダム広場の様子を収めたものであろう
この写真を見ていると、「どうして人は空き地だったところに何かが建ってしまうと、何もなかった時のことをうまく思い出せないのだろう。」と、少し悲しくなる。
そして、ヴィム・ヴェンダースの映画に出て来たワンシーンを思い出す。
Ich kann den Potsdamer Platz nicht finden! Nein, ich meine, hier… Das kann er doch nicht sein! Denn am Potsdamer Platz, da war doch das Cafe Josti…
壁しか存在しなくなったポツダム広場を歩きながら、ホーマーは上の台詞を心の中でつぶやくのだ。「ポツダム広場が見つからない。」と。
容赦なく開発が進んだベルリンで何度こういう気持ちにさせられたことだろう。
「私の知っているベルリンが見つからない!」と。
それでも不思議なもので、人はすぐに新しい風景に馴染んでしまい、以前の風景が脳裏から薄れてなくなってしまいがちだ。環境の変化に適合しようとする習性なのだろうが、何かのきっかけ ー その多くは当時の顔見知りだったり、音楽だったり、匂いだったりするわけだが、その場所が持っていた面影のようなものが見える瞬間がある。
変な時間に一人で夜道を急ぎ足で歩いている時や自転車で街を移動したりする時なんかにも。
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