ラトビアの首都リガ③ 中央市場 〜Reise nach Riga〜

前回の続き。

私も娘も気に入ってリピートしたのが、リガの中央駅から徒歩圏内にある中央市場だ。かつてはツェッペリンの格納庫だった建物の上部を再利用して作られた市場である。

1930年代には欧州内で最大規模のモダンな市場として知られていた。総面積は7万2千平方メートル。5つのホールが連なっている。

魚売り場のホール
イクラも人気商品
魚の干物もよく見かける

不思議なことに、中央市場ではロシア語話者が圧倒的に多かった。クッキーやチェコレートの量り売りコーナーでも、パン屋でも、野菜売り場でもロシア語でどんどん話しかけられるのには驚いた。

1キロでこのお値段

モスクワに住んでいた時のことを彷彿とさせるやり取り。当時のモスクワにはまだスーパーのような便利なものがほとんど存在せず、棚に並べられた商品を指差して買いたいものを伝える必要があったからだ。

人気のクッキー屋さんで売り手の女性がなかなか来てくれず、困っていると男性が前に入るように手招きしてくれた。ロシア語で「ありがとうございます。」と一言言うと、とても嬉しそうな表情で「いえいえ、良い1日を。」と返してくれたのだが、ラトビアでのロシア語話者の心情というのはどういうものなのだろう、と考えた。

パンもあまりの種類の多さに選べずモタモタしていると、売り手の年配の女性に「買うの?買わないの?」と急かされる始末。手加減なしで容赦ないのがこれまたある意味ロシア的。

美味しそうなものが山積みに

「市場」という文化も直接的なやり取りのない大手スーパーにとって代わられる時代。多少面倒でも、あーでもないこーでもないと話をしながら買い物をするのはやはり楽しいものだと思う。便利になればなるほど、生活はどこか無機質で味気がなくなるような気もするから。

小腹が空いたので、美味しいスープを求めて歩いたがモダンに改装された市場のグルメコーナーにはベルリンのマルクトハレと同じようなラインナップばかりが並んでいた。ポケにフォー、バーガー系のお店、といった感じだ。

諦めずに魚売り場のホールに行くと、鄙びたインビスがあった。もちろんここにはキャベツのスープや新鮮な魚の乗ったパンなどが売られていた。美味しくて安いのはもちろんこちらの方だ。

キャベツのスープ1,80ユーロ

ここでも、ロシア語で注文すると、「あなた日本人でしょ?なぜロシア語を話せるの?」と娘と私の会話を聞いていた女性販売員に話しかけられた。

モスクワに半年ほど住んでいたことなどを話すと、とても喜んでくれた。そう、この市場ではロシア語を話すと途端に態度が軟化する人々が多いのだ。この女性はなぜか娘にチョコレートまでくれた。

リガではこんな風にロシア系住民の強いエリアとラトビア人の強いエリアが存在するように感じる。いわゆるヒップなカフェやオーガニック系のお店はラトビア系、どちらかと言えば伝統的なカテゴリーではロシア系が強いような気がする。中央市場がそうだったり、生地屋さんでもロシア語だったり。

ソ連時代にラトビアに移住してきたロシア系住民は独立したラトビアに統合する気がなく、社会問題にもなっているという。時間が解決してくれるとは思うが、街中を歩いていても市内交通を利用していても、年配層だけではなく小さな子供達がロシア語で会話しているのを幾度となく目にした。

オシャレなカフェの植木鉢にラトビアの国旗がついた爪楊枝が刺さっているのにもこういった複雑な社会事情があるからなのかもしれない。

統合政策はドイツでもラトビアにも事情は大きく異なるが存在する。時代が進めば国境がなくなる日もそう遠くはないようにも思うが、今はまだどこもかしこも過渡期なのだろう。


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Comments

“ラトビアの首都リガ③ 中央市場 〜Reise nach Riga〜” への1件のコメント

  1. […] 前回の投稿「中央市場」編では、伝統的な分野ではロシア系住民が強い、というようなことを書いた。 […]

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