(R.U.R.) /ロボットという言葉

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兄ヨゼフが描いたカレル

ロボットという言葉はこの劇曲で生まれて世界中に広まった。
岩波文庫の「ロボット」(R.U.R) カレル・チャペック作のカバー表紙にはこう書かれている。ロボットという言葉がカフカに並ぶチェコの国民的作家カレル・チャペックによって作られたものだということをご存知だろうか。
舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場。人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし、人類抹殺を開始する。機械文明の発達がはたして人間に幸福をもたらすか否かを問うたチャペック(1890−1938)の予言的作品。
時代が変わっても常に人間は、人工物であるロボットにある種の脅威を抱かざるを得ないようだ。そして一部の作家、中でもSF作家には未来を予知する能力が備わっているに違いない。
現在の我々の社会を取り巻く諸問題の多くは、この「未知なるものに対する一抹の不安」が原因になっているのではないだろうか。

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ドイツ発「インダストリー4.0が製造業を変える」より

ドイツで言えば、政府主導の「インダストリー4.0」による加速的なデジタル化やモノのIoT、そして今後も止むことはない難民流入などが、まさにこの「未知なるもの」に当たるのではないか。
チャペックの「ロボット」たちは感情や痛みを与えられたことで、人間に憎しみを抱き人類抹殺を始める。未知のものはこうしていつも悪者として描かれるものだ。この劇曲では最後にロボットが愛と魂を持ち、「新たな人間」として再出発するわけだが、デーィープランニングなどで日々どんどん進化しているAIはどこまで人に近づき、人と共存できるのか。5年、10年後が楽しみである。
ところで、チャペックの活躍した時代はまだチェコがスロヴァキアと結んでチェコスロヴァキア共和国を創り、経済的・文化的にも栄えた黄金時代だった。当時のチェコスロヴァキアは世界で第8位の工業先進国だったというのだから驚きである。

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劇ポスター”R. U. R. Rossum’s Universal Robots”

そんな中、生まれた「ロボット」という言葉、チェコ語のrabota=強制労働という言葉から作られた、とも言われているが、確かに劇曲中にも「手を動かして働く以上、我々の『同志』だ」とロボットが手を動かすのが好きなアルクイストという建築士のみを生かしておく場面が出て来る。ロボットによって労働から解放された人間は誰一人として働かなくなり、堕落してしまう。
カレル・チャペックは「ロボット」という言葉を作ったのは自身ではなく、兄で画家のヨゼフ・チャペックであるとしている。あらすじを兄に話し、どのような名前にしたらよいだろうかと聞いてみたところ、口に絵筆をくわえてもごもごとした口調で「ロボット」はどうだろうかと答えたという。
兄のヨゼフは1916年にチャペック兄弟として正式にデビュー。1921年、カレルと共にプラハの「Lidové Noviny 紙」に入社して紙面の風刺漫画を担当したが、ナチズムとアドルフ・ヒトラーに対する際どい批判により、ドイツがチェコスロバキアに侵攻した1939年に逮捕・収監され、1945年4月、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で亡くなった。カレル・チャペックはドイツがチェコスロヴァキアに侵攻し家宅捜査を受ける前年1938年に既に亡くなっている。
ドイツの隣国チェコにもナチスに屈せず創作を続けた人々がいた。

参考及び一部抜粋:「ロボット(R.U.R)」チャペック作、千野栄一訳あとがき/岩波文庫; 「山椒魚戦争」カレル・チャペック作、栗栖継訳/ハヤカワ文庫; Wロボット; Wヨゼフ・チャペック; W R.U.R

 

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