Junge Staatsoper / 子供のためのオペラ
先月末にDer unglaubliche Spotzを子供たちと観た。
ストーリーが面白い。
アリューリエン国(Allyrien)の王アスタス・バスタス(Astus Bastus)は急性騒音過敏症に悩まされている。ところがバートロメウス・ブルムホルト(Bartolomäus Brummhold)なる作曲家と王女アスタ・バスタ(Asta Basta)がアリューエン王国初のオペラの初上演を試みる。
ところが、第一幕の途中で既に国王は頭痛と耳の痛みに襲われ、「Nein, nein, nein!」とオペラを中断させ、耳を押さえながら叫ぶのである。「静かにしてくれ!静かに!オペラの上演は今後一切禁止する!」と。
のっけからオペラを否定するかのような展開に度肝を抜かれるが、これもドイツでは常套手段で子供向けだからといって一切手抜きなし。思った以上にひねりの効いたストーリーとなっていた。
会場は今年の秋にようやく修復工事を終えたばかりのウンター・デン・リンデンに面した国立歌劇場の斜め後ろに位置するNeue Werkstatt。同じ棟に歌劇場のインテンダント控え室も入っている。
中は外観とは打って変わってモダンでシンプルな造りである。
今回の舞台はそれほど広くない会場の真ん中に配置されており、舞台を囲むように椅子が置かれていた。観客が一体感を持ちやすいよう配慮されている。小さな子供のために椅子の前にマットレスのようなものも置かれている。
子供達は思い思いの格好で舞台を見つめる。ゴロッとマットレスに転がる子もいれば、ブレッツェルをかじりながら観る子もいる。プログラムには対象年齢が6歳以上とあった。
さて、そのプログラムカタログを読んでみると、このような記述が。
MUSIK IST HEUTZUTAGE ALLGEGENWÄRTIG – IM RESTAURANT, IN FLUGHÄFEN, IM AUTO. JEDE MUSIK, DER MAN NICHT ZUHÖRT, IST ABER NUR GERÄUSCH.
Daniel Barenboim, Dirigent
「音楽は今日、偏在的なものである。レストランや空港、車内。耳を傾けられない全ての音楽はただのノイズでしかない。」
ダニエル・バレンボイム、指揮者
DIE MUSIK, DIE MIR AM LIEBSTEN IST UND DIE ICH MEINER EIGENEN ODER IRGENDEINES ANDEREN VORZIEHE, IST EINFACH DIE, DIE WIR HÖREN, WENN WIR RUHIG SIND.
John Cage, Komponist
「私にとって最愛の音楽、そして私自身の、あるいは誰か他の音楽より良いものを挙げるとすれば、それは単純に私たちが静かな時に耳にするものである。」
ジョン・ケージ、作曲家
カタログもこんな風に哲学的で読み応えのある内容であった。
かと思えば、「君は知っているかな〜」に続く以下のテキストも。
- 耳が胎児の時に一番最初につくられる感覚器官だということを?
- 耳は40万もの音色を聞き分けることができるということを?
- 私たちの持つ六感の中で唯一24時間中働いているのが聴覚だということを?眠っている時でさえ、危険が察知できるように聴覚が働いているんだよ。
- 人間は世界で一番静かな場所(アメリカにある実験室)で20分以上、静寂に耐えられないということを?
- 耳は聞くためだけではなく、バランス感覚も司っているということを?
- 石器時代には全ての人間が耳を揺らせたということを?これは生き延びるために必要なことだったんだ。その当時の人は耳をあらゆる方向に動かすことができた。狩のためだ。自然の中で生き延びる必要がなくなった私たちは筋肉を失い、耳を動かすことができなくなったんだ。
- ハサミムシ(Dermaptera)は”Ohrwürmer”(耳の虫)と呼ばれるけれど、それは以前、耳の炎症にハサミムシの粉を処方したからなんだ。でも、これはただの迷信なんだけれどね。
というわけで、大変勉強になりました。
もうすぐ6歳の息子曰く、「あんまり面白くなかった〜。でも、王様が一番良かったけどな。」