Schraibm nach Gehoä / 聴覚をもとに書く

タイトルのドイツ語を見て、あれ?と思った方、正解です。
正しくは„Schreiben nach Gehör“ 、聴覚をもとに書く、という意味だ。

これが何のことを指しているのかと言うと、ドイツの小学校教育でテーマになっているドイツ語の学習方法のこと。「小学校3年生になってもドイツ語がきちんと書けない」問題を語る上で必ず持ち出される教授法である。

我が家の9歳の長女もLRS(Lese- und Rechtschreib-Schwierigkeiten)一歩手前というか、とにかく正書法にかなり問題がある。

ドイツの学校教育は最高!などと謳うインチキサイトのようなものも巷では見かけたりもするのだが、個人的な意見としては、基本的に日本の小学校の義務教育は素晴らしいと考えている。学校の設備もそうであるし、何と言っても基礎学習能力がきちんと身につくイメージがあるからだ。

さて、ドイツは連邦制で州ごとに事情は大きく異なるが、自分の子供たちが実際に通うベルリンの小学校を見ていると、疑問に思うことがかなりある。中でも母語ドイツ語の教育方法に首をかしげる場面が多い。

Quelle: Florian Schuh/DPA

タイトルの「聞いたとおりに書く」というメソッドがそのひとつで、実際にどういうことかというと、子供に耳で聞いたとおりにドイツ語をまずは自由に書かせ、教師(親)が特に誤りを指摘しない、というやり方だ。

1年生の1学期間だけ、というなら話は違ってくるが、ひどい場合だと3年生になっても誤りを指摘しない場合もあるのだから仰け反るしかない。
この頃になると、間違ったスペルが定着してしまい、そこからまた訂正して新たに覚えるという作業が必要になり、時間も労力も削り取られることになる。

ドイツで育ったわけでも、学校に自分が実際に通っていたわけでもないので、これが正解、という比較できる情報がなかったため、放置してしまったのが悔やまれる。この教授法のせいなのか、長女は4年生だというのに正書法が身についておらず、かなり大変なことになっている。

1年生の時に間違ったままで放置されている単語帳に驚き、担任に聞いたことがあるが、「今はまだ特に訂正する必要はありません。」と言われ、クラスの保護者にこれが普通なのか、と尋ねると彼らが実際に学校で習った時は全く別のやり方で教わったのでよく分からない、という返事だった。

LRSやSchreiben nach Gehörに関する記事などをざっと読んでみたところ、共感できる記事があったので、その中から何箇所か引用しておきたい。

„Schreiben nach Gehör“ ist unterlassene Hilfeleistung. Denn die Lehrmethode verlegt das Lernen von der Schule nach Hause.

In den weiterführenden Schulen heißt es dann, ein Drittel der Kinder habe eine Lese-Rechtschreib-Schwäche.

Wie eine solche haarsträubende Methode flächendeckend Eingang in die Grundschulen finden konnte, bleibt ein Rätsel.

Der Preis für die Eltern, meist ja die Mütter, ist allerdings hoch: Sie müssen für nachmittägliche Rechtschreib-übungen Zeit einplanen.

Kinder aus bildungsfernen Familien oder von Migranten sind benachteiligt, wenn mit ihnen keiner üben kann.

“Schraibm nach gehöa” vom 04.03.2015 FAZ
https://www.faz.net/aktuell/politik/inland/orthographie-in-schulen-schraibm-nach-gehoea-13456654.html
  • 「聞いた通りに書かかせる」メソッドは学校教育を家庭に持ち込む原因になっている。
  • 小学校以上の高等教育の場において3分の1の生徒がLRS(読み書きが困難な状況)に陥っている。
  • このような状況を生み出すメソッドがドイツ全国に浸透している理由が全くわからない。
  • このメソッドにより親、特に母親が多大な迷惑を被っている:放課後の家庭学習に正書法の時間を割り当てる必要があるからだ。
  • アカデミックでない家庭の子供や移民背景を持つ子供たちについては正書法を学ぶ機会が失われてしまう。

日本でも家庭学習が必要がというのはドイツの状況と同じなのかもしれないが、母語のドイツ語教育について学校に任せられない状況である、ということは手遅れにならない前に認識しておくことが大事だと思った次第。




Comments

“Schraibm nach Gehoä / 聴覚をもとに書く” への4件のフィードバック

  1. […] / Good bye, Litfaßsäule! /ベルリンの広告塔よさようならNo.3 / Schraibm nach Gehoä / 聴覚をもとに書くNo.4 / 【ベルリン発】サーチエンジン / EcosiaNo.5 / Grippewelle in Deutschland […]

  2. […] ドイツでは小学校の教育だけでは基礎学力がつきにくいためだ。Schraibm nach Gehoä / 聴覚をもとに書く、でドイツ語教育についての疑問をまとめているのでご参考までに。 […]

  3. […] ・聴覚をもとに書く・昔ながらの教授法〜母語として書く・ベルリンの学校危機 […]

  4. […] 昨日の2年生の担任もこれまでの「聴覚を元に書く」やり方はもうしていない、という話だったので、ベルリンでもようやく元来のFIebelメソッドに戻す方向になったのかもしれない。 […]

Leben im Ausland / 海外移住の盲点 | ベルリンスタイル へ返信するコメントをキャンセル