コロナ禍で変化したこと
先日、ベルリンでは各政党のイメージカラーから「信号連立」と呼ばれる社民党(赤)・自由党(黄)・緑の党からなる連立政権の発足に関するプレス会議が行われた。総選挙後の連立交渉もひと段落ついたことになる。これまで選挙関連の報道で下火になっていたコロナ関連のニュースが、再びメディアを賑わすことになるだろう。
さて、そんなドイツだが、コロナウイルス感染状況に関する見通しは全く明るくない。第四波が収束する気配は微塵もなく、1日の新規感染者数も11月に入ってからこれまでの最高値を何度も塗り直している。ここ数日は、とうとう7万人台を超えてしまった。政治家もここにきて「ワクチン接種を」と強い口調で繰り返すようになってきている。
このような感染状況の中では、いくら2回の接種を終えているとはいえ、さすがにこれまでのように気軽に外食をしたり買い物に行く気になれない。約5ヶ月前に打ったワクチンの効果が半分以上も薄れているとすれば尚さらだ。
美術館に行こうとチケットを予約していたが、娘の風邪とも重なったので訪問をキャンセルした。だが、新たに予約を取り直す気にもなれない。シアターでの観劇も何度か考えたが、この感染状況を鑑みるとどうしても二の足を踏んでしまう。
「別に今の状況下、リスクを犯してまで行く必要はないかな…」
こんな風に室内で一定の時間、一定数の人が集まるものに対して、どこか消極的な気持ちが働いてしまうのだ。この冬もこのままいけば、また映画館やシアターも閉鎖してしまうかもしれないというのに。
それはそうと、6月初頭のロックダウン以降に何をしたか、覚えている範囲で書き出してみた。
・オープンエアのベルリン映画祭で映画を3本鑑賞
・教会のミサで聖歌拝聴
・近所のガラガラに空いている映画館で「ノマドランド」鑑賞
・グローピスバウの草間彌生展
・子供たちとフンボルトフォーラムで展示を観る
・娘とフィルハーモニーおよび室内楽ホール訪問
・子供たちと動物園訪問
・子供たちと科学博物館訪問
ロックダウンが開けて数値が落ち着いている間に夏休みを挟んだので、その間子供たちと割と色々と見に出かけている。直近では、知人に誘われた教会でのコンサートに行ったくらいだろうか。コロナ禍が始まってからは、開始時間の遅い観劇やコンサートへ足を運ぶことがほぼなくなっている。特に数値の高くなる冬場にその傾向が強まる。
Die Menschen sind entwöhnt. Der Soziologe Hartmut Rosa argumentiert, dass der Hunger nach sozialen Kontakten bei Entzug nach einer Weile nachlässt. Hat man sich also erst mal an die Gemütlichkeit von Couch und Netflix gewöhnt, fällt es umso schwerer, sich wieder aufzumachen.
nachtklitik.de: Die Menschen werden entwöhnt
最近目にしたnachtklitikの記事にこんな記述があったので引用しておこう。「人は離れていく。社会学者のハルトムート・ローザは、社会的な接触への渇望は、それが奪われてからしばらくすると減少すると述べている。そのため、一度ソファーやNetflixの快適さに慣れてしまうと、再び外に出るのが難しくなる。」
快適なソファーに寝転がってネトフリを見る習慣はないが、言わんとすることはよくわかる。「しない状態」が長期化すればするほど、それがないのが当たり前になり元に戻すことは難しい。慣れというものはある意味恐ろしい。
2021年11月22日にオーストリアでは劇場が閉鎖。バイエルン州では、劇場は客席の4分の1しか占有できず、7日間の発生率が1000人以上になると、完全に閉鎖されてしまう。また、コロナの影響が甚大なザクセン州では、12月12日まで劇場が閉鎖されることが決まった。
Berlin
nachtklitik.de: Was gilt wo?
In der Hauptstadt gilt ab dem 27. November eine Variante der Regel 2G-Plus. Es dürfen nur Genesene und Geimpfte ins Theater gehen. Zusätzlich müssen sich die Häuser zu einer weiteren Sicherheitsmaßnahme ihrer Wahl verpflichten: tagesaktueller Schnelltest, Maskenpflicht am Platz oder Abstand halten.
「ベルリンの劇場では11月27日より、2G-Plusルールが適用される。ワクチン接種済みあるいは回復者だけが劇場に入ることができる。さらに、劇場側は迅速検査か座席でのマスク義務、距離を保つことなど、追加する安全対策を約束しなければならない。」
このような、どこか中途半端とも思えるルールの導入だけで現状を乗り切れるのだろうか。昨年からこれまでを振り返ってみると、半年ごとに劇場や美術館、コンサートホールといった文化施設はクローズを余儀なくされてきた。開いたり、閉まったりの繰り返し。コロナを巡る状況が改善されたようには見えない。そんな中で新しいプロダクションの計画を立てたり、演者のモチベーションや作品のクオリティーを保つのも並大抵のことではないだろう。
その上、ここ数日は南アフリカで見つかった新しい変異株B1.1.529についても取り沙汰されている。アルファやデルタといったこれまでの変異株以上に危険ではないかとされる新種の変異株。すでにベルギーや香港などで感染者が見つかったという話も出ている。
ロバート・コッホ研究所のヴィーラー所長は「5万人が感染した場合、そのうち400人が死亡する」とツァイト紙のインタビューで述べている。新規感染者数の0.8%が亡くなることになる。そして今はその数も7万人以上に達しているわけだ。
“Wenn sich 50.000 Menschen infizieren, werden 400 von ihnen sterben”
https://www.zeit.de/gesundheit/2021-11/lothar-wieler-corona-impfung-rki-interview/seite-2
正直、ブログを書くにしても全く楽しくない話題であるし、厳しすぎる現実ではある。現実から目を逸らし続けるか、真正面から見据えて自分のできる範囲でやれるだけのことをするのか。そんなひとりひとりの心がけが、数字に跳ね返ってくるはずだ。
ベルリンに住みたいと思った大きな理由のひとつである「文化的な土台」を守るためにも、できることをひとつずつやっていきたい。それに、2021年だというのにドイツ国内だけでも、すでに10万人を超える人が亡くなってしまっている。その上、新たな変異株なんてもう懲り懲りだというのが正直な気持ち。
タイトルPhoto by Ludovic Migneault on Unsplash