Intendant Chris Dercon tritt zurück / クリス・デルコンの退陣

フォルクスビューネの劇場監督クリス・デルコン退陣。
え、さすがにまだ早すぎるのでは?
と一瞬目を疑ったが、彼の就任とそれにまつわる一連の騒動を考えると、なんの不思議もない流れなのかもしれないな、と思い直した。
ベルギー出身のキュレータ畑であるクリス・デルコンのフォルクスビューネ劇場監督就任。そして、それに対する風当たりが相当キツかったのだろう。多くの劇場関係者が批判した「イベント小屋」とやらに一度は足を運んでおくべきだろう、と考えを改めチケットを購入することにした。
シアターやダンスにそれほど詳しいわけではないので、プログラムを眺めても全くピンと来ない。何となくアンテナに引っかかったサミュエル・ベケットの劇作品とダンス・パフォーマンスの二演目を観てみることにした。
それがこちら ↓


Samuel Beckett
Nicht Ich / Tritte / He, Joe
Schauspiel
ca. 75min
In deutscher Sprache

 Jérôme Bel
The show must go on
90 min
Englisch


ところが、いざチケットを購入しようとオンラインでサイトを確認したところ余りの残席の多さに愕然とした。ベルリンの他の劇場でも、1ヶ月を切った公演チケットが半分以上も残っているというのに余り出くわした経験がないからだ。
スクリーンショット 2018-04-16 17.03.33
5月4日の公演分でまだ上のように残席だらけ(4/16現在)なのである。これはさすがに購入する側としても多少の不安が残る。この演目、果たして面白いのか!?
どうしてここまでチケットが売れないのだろう。ましてやサミュエル・ベケットのNicht Ich / Tritte / He, JoeはWalter Asmus監督作品である。Asmusは1941年にリューベックで生まれ、サミュエル・ベケット本人には1974年に当時の西ベルリンにあったシラー劇場で出会っており、彼の有名な戯曲「ゴドーを待ちながら」の演出のアシスタントを経験しているのだ。Asmus監督は言わば、70年代後半からサミュエル・ベケット作品を世界中で公演してきたサミュエル通だとも言える。
Der Regisseur Walter Asmus, geboren 1941 in Lübeck, begegnet Samuel Beckett 1974 am Schiller-Theater im damaligen Westberlin, wo er dem Autor und Regisseur bei seiner berühmten Warten auf Godot-Inszenierung assistiert. Diese Begegnung ist der Beginn einer philosophisch und formal prägenden Arbeitsbeziehung und Freundschaft, die bis zum Tod Becketts 1989 anhält. Seit Ende der 70Walterer Jahre inszeniert Walter Asmus Becketts Stücke weltweit. – Volksbühne HPより
全プログラムが仮にこのような状況なのであれば、デルコン退陣の理由もある意味納得が行く。
一連の騒動のせいで、私自身も気分的な理由からVolksbühneから足が遠のいてしまっていた。どんな気分なのかと言われれば、今のベルリンを覆っている空気とでもいうべき「ジェントリフィケーション」の気配がする対象を毛嫌いする態度、とでも言えばいいのだろうか。
既存の価値を尊重せず、ズカズカと土足でベルリンに足を踏み入れて来る外資に対する不信感のようなもの。「またか。」という一種の諦めに近いようなもの。
このようなネガティブな態度から新しいものは何も生まれないのかもしれないが、せめて既存の価値は尊重して欲しいものだと常日頃思っている。
これによってさらにハードルの高くなったカストロフの後任者探し。Volksbühneの今後の進展に期待するより他はない。正式な劇場監督が決まるまでは、代理の劇場監督としてシャウシュピール・シュトゥットガルトのクラウス・デュル(Klaus Dürr)に白羽の矢が立ったようだ。

 


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